東京異界録 第2章 第10録

 恐怖騒動がひと段落すると、私とユキは自宅に戻り、如月君はそのままカグナさんと話をした模様。
 その最中で、私の力を高めるために、この辺りの怨鬼を、彼と一緒に退治して回ることになった。念のために、カーラ君やカヌス君も同行することになったのだが。
 目的は相変わらず、まだ早いの一点張りで、わからなかったんだけどね。はあ。
 おそらく、監視、というより、私の力に関してのことだと思われる。カーラ君に、同級生から色々と聞いてみるといい、と言われたからだ。
 そこで、今後の動きを確認しようってことになったのよ。今日の放課後、バスケの練習が終わったら、私たち三人とユキを含めてカグナさんの店に集まるって話になったのよ。
 「本当に行き当たりばったりだったんだな」
 と、呆れる如月君。はい、もうグウの音もでません。
 それに引き換え、彼は物の怪たちがいる場所をしっかりと把握していた。というより、現れやすい場所、と言うべきだろうか。
 「数年前のだからアテになるかわからないが」
 「え、じゃあ今はどこで戦ってるのよ」
 「異界に行ってる。そっちのほうが強い奴がいるからな」
 「はあっ。それってすごく危ないじゃない」
 「危なくなったら逃げればいいだろ。そっちのほうが効率がいいんだ」
 つまり、如月君は異界で力を得てるってことよね。うろついてる人間って、この人のことだったんだ。
 「じゃあ、オレたちもそっちに行ったほうがいいんじゃないの」
 「やめとけ。あの程度の怨鬼で苦戦してるようじゃ殺されるぞ」
 しれっと口にした言葉に、弟はムッと顔をゆがめる。
 「まあまあ、ケンカしないでさ~。涼太君、わかることは二人に教えてあげてね~」
 おれたちはサポートに回るからね~、とカーラ君。昨日の怖さはどこにいったのだろう。
 「それは構わないが。あんたたちが教えればいいんじゃないのか」
 「う~ん。余計なことを言っちゃうかもしれないからね~」
 「確かに加減が難しいよな」
 と、カヌス君。上を見ながら頭をかいているあたり、言葉を選んでいたことがわかる。しかも今、気になることも言ったわよね。
 「涼ちんでも知らないことがあるんだ」
 「まあな。俺が知ってるのはほんの一部だろうな」
 「そういう風に誰かさんが仕向けたからね~。古文書は持ってるんでしょ~」
 「ああ」
 同級生が話した古文書は、十二月(じゅうにげつ)の直系のみが受け継げるモノらしく、そこには能力者のイロハが書かれているとか。
 でも、すべてを読むことができないらしい。理由は、レイリョクの高低が関係しているとか。
 「へー、レイリョクで見える範囲が決まるんだ。変なの」
 オレじゃ真っ白だね、きっと、とユキ。本当よね、何でそんなまどろっこしいことをしたのかしら。
 「古文書はともかく、どうする気だ」
 「しらみ潰しに回るしかないんじゃないかしら。とりあえず力をつけてカクセイさせないきゃないし」
 「わかった。なら近場から行くか」
 「悪いわね。助かるわ」
 背もたれに寄りかかった如月君は、なぜか不思議そうに私を見ていた。
 その後、私とユキと如月君の三人は、彼が知っている場所へと向かい、何日かにわたってたくさんの怨鬼を倒していく。十二月(じゅうにげつ)にかかれば簡単なのか、彼に近づいた人外ならざる者は、一撃で葬り去られていった。
 ちなみに、妖怪兄弟は十三、四歳の和服姿で、今までと同じように見守るだけ。ときおり片方がいなくなることがあるが、戻ってくると如月君にフダを渡していた。
 おそらく、私に使っている時間をフォローしてくれているのだろう。そう考えると、ありがたいような申し訳ないような気持ちになってしまう。
 「馴染むのが遅いな」
 「なじむ? どういうことよ」
 如月君いわく、フダにして力を転換するためには二つの方法があるという。ひとつはシキにすること、もうひとつは物の怪を体内にいれることだとか。
 とはいえ、体への負担度も変わってくるため、基本は前者で力を高めるのが普通らしい。その分、能力者の力になる早さもあがるっていうのだけど。
 どうやら、私は他の関係者に比べて遅いようなのだ。
 「霊力が高ければ早いはずなんだが」
 「そうなんだ」
 「主な式は二体なんだろ。それに供えてるにしては、な」
 「う~ん、私もよくわからないのよね」
 言われたとおりにしてるんだけど、と返す。彼にも原因が特定できないようだ。
 「何かが妨害してるんじゃないの」
 「何か、って何がよ」
 「さあ。そう思っただけ」
 あんたねえ。
 「いや、あながちハズレじゃないと思うぞ。そうとしか思えない」
 「やっぱし? オレって天才っ」
 なぜかあったガムテープで口封じをすると、邪魔をしそうな対象がないかを探す。が、スマホを見ても何も思い浮かばない。
 「竜間(たつま)、は関係ないものね」
 「ないな」
 「なくていーよ」
 いつの間にはがしたのかしら。まあいいけど。
 「その原因がわからない限り、札を集めても無駄かもしれないな」
 原因、かあ。いったい、何が悪いのだろう。
 「この周辺はほぼいなくなっただろうな。とりあえず次の場所に行くか」
 「あらまあ、そんな寂しいこと言わないで」
 私と遊びましょ、と、謎の女が現れた。

 

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