東京異界録 第3章 第32録

 「マ、マーラさんって、もうひとりの要(かなめ)だったんだ」  「おや、そう見えないかな。まあ、戦いにそぐわないイイ男だからね」  ふふ、と何故か嬉しそうに話すマーラさん。どう突っ込んでよいものやら。  「プライベートに …

東京異界録 第3章 第31録

 私が目を覚ますと、よい香りが出迎えてくれる。どうやら、誰かが食事を用意してくれているようだ。  「おや、起きたのかい」  聞き慣れない男の人の声がする。二、三回まばたきをし、ようやく理解が出来た。あの戦いの後、疲れて爆 …

東京異界録 第3章 第30録

 「どうするのだ。式になるか消えるか、選ぶがよい」  カーラ君に顔と声がそっくりな羽根の生えた男は、学校を覆っていた結界を女にかけ始める。閉じ込められた妖怪は、もがいて脱出しようとするが、叶わないようだ。  また、周りに …

東京異界録 第3章 第29録

 ここは一体どこなんだろ。真っ暗で何もわからないし、聞こえないし。  わかるのは、ただ怖いってことだけ。女妖怪に捕まってからの記憶がまったくなくて。  助けを呼ぼうにも、体を動かせないみたいなのよね。当然、声も出ない。 …

東京異界録 第3章 第28録

 霊子によって発生させた竜巻から姿を見せた楓は、服装こそ変わらなかったが、髪と瞳の色が抜け、白と化していた。まるで、顔はそのままだが急激に老化したような雰囲気でもある。  しかし、加阿羅(カーラ)は何ひとつ動かさずに、そ …

東京異界録 第3章 第27録

 「素晴らしい。これが小娘の力なのか」  姿なき声は、まさしくこの学校に通う女子生徒のもの。しかし雰囲気が普段と異なるばかりか、地面から姿を現したのだ。  「この力があれば誰にも負けはしない。たとえ要(かなめ)であっても …

東京異界録 第3章 第26録

 「ご、ごめんなさい。わ、わたし」  「明日香ちゃんのせいじゃないから、ね」  と、泣いている最年少をなぐさめる、ひと足先に保健室にいた雪祥(ゆきひろ)。彼女とプリムは楓が闇の底に落ちてしまったと同時に、伽糸粋(カシス) …

東京異界録 第3章 第25録

 ケルベロスと呼ばれる地獄の門番と対決する覚悟を持った矢先、久我(くが)先生はもっと広い場所で戦おうと提案。確かに廊下で戦うには人数が多いだろう。  それに、今はどうにかして危険を排除するのが先だ。また、理由は不明だが、 …

Twitter小説 その391

●うれのこり(売れ残り) はあ、また売れ残っちまった。まあいい、今夜の晩飯にもなるしな。お、ネコか。 よしよし、お前、腹が減ってるんだろ。形は悪いが食えるものだ、ほらよ。 それにしてもよく来るな。飼い主はいないのか。かわ …

東京異界録 第3章 第24録

 危うくドンパチになりかけた同じ高校の男子生徒は、私の名前を聞いてくる。  だが、ハッ、としたように、  「悪い、俺は泉(いずみ)。三年だ」  「藜御(あかざみ)です、二年です」  「やっぱりお前が藜御(あかざみ)か」 …