東京異界録 第3章 第32録
「マ、マーラさんって、もうひとりの要(かなめ)だったんだ」 「おや、そう見えないかな。まあ、戦いにそぐわないイイ男だからね」 ふふ、と何故か嬉しそうに話すマーラさん。どう突っ込んでよいものやら。 「プライベートに …
「マ、マーラさんって、もうひとりの要(かなめ)だったんだ」 「おや、そう見えないかな。まあ、戦いにそぐわないイイ男だからね」 ふふ、と何故か嬉しそうに話すマーラさん。どう突っ込んでよいものやら。 「プライベートに …
私が目を覚ますと、よい香りが出迎えてくれる。どうやら、誰かが食事を用意してくれているようだ。 「おや、起きたのかい」 聞き慣れない男の人の声がする。二、三回まばたきをし、ようやく理解が出来た。あの戦いの後、疲れて爆 …
「どうするのだ。式になるか消えるか、選ぶがよい」 カーラ君に顔と声がそっくりな羽根の生えた男は、学校を覆っていた結界を女にかけ始める。閉じ込められた妖怪は、もがいて脱出しようとするが、叶わないようだ。 また、周りに …
ここは一体どこなんだろ。真っ暗で何もわからないし、聞こえないし。 わかるのは、ただ怖いってことだけ。女妖怪に捕まってからの記憶がまったくなくて。 助けを呼ぼうにも、体を動かせないみたいなのよね。当然、声も出ない。 …
霊子によって発生させた竜巻から姿を見せた楓は、服装こそ変わらなかったが、髪と瞳の色が抜け、白と化していた。まるで、顔はそのままだが急激に老化したような雰囲気でもある。 しかし、加阿羅(カーラ)は何ひとつ動かさずに、そ …
「素晴らしい。これが小娘の力なのか」 姿なき声は、まさしくこの学校に通う女子生徒のもの。しかし雰囲気が普段と異なるばかりか、地面から姿を現したのだ。 「この力があれば誰にも負けはしない。たとえ要(かなめ)であっても …
「ご、ごめんなさい。わ、わたし」 「明日香ちゃんのせいじゃないから、ね」 と、泣いている最年少をなぐさめる、ひと足先に保健室にいた雪祥(ゆきひろ)。彼女とプリムは楓が闇の底に落ちてしまったと同時に、伽糸粋(カシス) …
ケルベロスと呼ばれる地獄の門番と対決する覚悟を持った矢先、久我(くが)先生はもっと広い場所で戦おうと提案。確かに廊下で戦うには人数が多いだろう。 それに、今はどうにかして危険を排除するのが先だ。また、理由は不明だが、 …
危うくドンパチになりかけた同じ高校の男子生徒は、私の名前を聞いてくる。 だが、ハッ、としたように、 「悪い、俺は泉(いずみ)。三年だ」 「藜御(あかざみ)です、二年です」 「やっぱりお前が藜御(あかざみ)か」 …
「ん。何だこれは」 見慣れない氷の矢がグッサリと刺さっているにも関わらず、蚊に刺された程度らしい三つ頭の巨大な犬は、ひとつの首をかしげる。 敵は天井にまで届く相手の大きさで、圧巻のひと言。しかも私の背後にはエサを欲 …