●哀咽
突然のことに哀咽 (あいえつ)した。侵入者に土地を奪われたのである。
相手は見たこともない武器と魔法で町を占領すると、人を集めはじめる。
長老の幼い孫娘の手をひっぱると、祖父に財宝の地図を渡すように脅した。
すぎたモノを持つと不幸を呼び寄せるかつての予言が当たったのである。
●合縁
人のつながりは奇妙なものだ。合縁もそうで、旅先だと一層そう思う。
家族を守るために旅に出た私の前に息子と同じ年頃の兄妹がいる。
親の教育が問題だったため共に旅をすることになったが、剣と風の魔法が得意だった。
妻と息子もそう。まるで導かれたように出会った気がして不思議でならない。
●哀猿
あの木に哀猿 (あいえん)がいる。数日の間、しきりに空へ吠えていた。
よほどのことがあったのか、足元に近くにエサや鳥などがいても変わらない。
しかしある人物が現れるとピタリと止まり、木から飛び降りて走りだす。
浅黒い長身の男が杖で猿のまわりに円を描くと、男の子が現れ抱きついた。
●哀艶
水滴に包まれたバラは哀艶(あいえん)に満ちている。洒落たバーに合いそうだ。
たまたま通った花屋で見かけた一輪のバラをとり匂いをかぐ。すると、
「濡れたバラはより綺麗ですよね。仲直りにひとついかがです」
なぜ喧嘩したことを知っているかわからないが、不思議な店員は満足そうだった。
●愛煙
愛煙するのは体に悪いといわれるが、やめられないのは仕方がない。
今日も一服、食後に休憩中にと20本ぐらい吸った。至福のときだった。
だか、もう煙草は吸わない。ある出来事のせいでトラウマになったからだ。
煙が形をつくり俺を襲ったのだ。嘘だと思うなら霧生ヶ谷の人間に聞いてみてくれ。
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