東京異界録 第1章 第9録

 ある声で目が覚めた私。どうやら眠っていたようだ。
 「ねーちゃんってば。ご飯できたよ」
 「ん、今いく」
 昼間から戦ったせいで疲れたのかもしれない。まあ、顔を洗えば意識がはっきりするだろう。
 「レオンにお供えしといたからね」
 「ありがと。顔洗ったらリビングに行くわ」
 そういって私は部屋を後にした。
 エビチリが主役の今日のご飯は、中華料理中心に展開されていた。相変わらず料理が上手だわ、鳴兄は。
 「そういやあさ、今度おっちゃんから誘われたんだってね」
 「オレが料理長にってヤツのことか。うん、どうしようかなって」
 「いいじゃん、鳴ちゃんの料理おいしいし」
 「うーん、ジブンの店、持ちたいんだよ」
 「親父に相談したら。協力してくれんじゃないかしら」
 「どうだろうね」
 と、あやふやな鳴兄。何かに悩んでいるのはわかるけど。突っこんじゃ悪いような気もするわね。
 「何か力になれることがあったら言ってよ。私たち、鳴兄にはお世話になりっきりだし」
 「そんなコトないさ。オレは姉さんに拾われたから生きてるんだし」
 むしろオレが感謝してるほうだ、と彼。やっぱり大人の対応だ。
 「それよりも、あんまりヨウがないなら出歩くなよ。最近あぶないし」
 「うん。でも今日は用があるから出かけるわ」
 「オレも一緒に行くから安心してよ、鳴ちゃん」
 にぱっ、と笑うユキ。いや、いろんな意味で説得力ないわよ、あんた。
 鳴兄は案の上の表情をし、無茶はするなよ、とだけ口にした。
 食後ののんびりタイムをソファーに座りながらリビングでくつろいでいると、ユキが、
 「ねーちゃん、九時半に例の場所だよ。覚えてる」
 「わかってるわよ。とっとと終わらせて寝ようと思ってる」
 「オレもオレも。いやぁ、寝不足はビヨーの大敵だしねっ」
 何が美容だ、っとにもう。本当にふざけるのが好きなんだから。誰かさんに似たのかしらね。
 冗談はともかく、これから学校行事もあるし、問題はとっとと解決するに限る。といっても、今回のは吹っかけられたものなんだけど。
 さて、っと。時間だし、準備をして行ってきますかね。
 私は部屋にはいり、持っていく物を確認。レオンにお留守番を頼み、帽子をかぶって部屋をでる。既に支度を終えていた弟と共に夜の町へと出かける。といっても、まだ八時半ぐらいだから、遅くはないと私は思っているんだけどね。
 やってきたのは町のはずれにあるとある廃墟ビル。なぜこのビルがこうなったのかは、今や誰も知る由はない。
 ましてや人目のつかないところである。つまり、
 「待ってたぞ、紅葉」
 今日という今日は決着つけようじゃないか、と、両手をパシッと合わせる今風の特攻服を着てる男。頭はオールバックの赤毛で、まあ、いわゆるソッチ系の奴なわけだ。
 うすうす感づかれているだろうが、アタシもそう。キッカケは、まあ、機会があったら話してやるさ。
 「うっとうしいんだよ、何度も仕掛けてきやがって」
 「そう言うな。強い奴に挑むのって楽しいだろ」
 と話しながら、でかい体を武器に殴りかかってくる相手。ひょいっと横にかわし、距離をとる。
 「姉貴にもそうだけど、オレにも負けてること忘れてんじゃない」
 生意気な口を利きながら、足をだして転げさせるユキ。彼も姿を変えており、金髪と青色の瞳、他校の学ランを身に着けている。そういうアタシも怨鬼(おんき)たちと戦う姿で、服だけは現代のファッションだ。
 「悪いねぇ、赤土(あかつち)。オレ、足長いからさ」
 「こ、このクソガキ」
 アッパーを繰りだすが、すばしっこい弟には効果がない。身長差を生かして懐に入り込み、得意の蹴り技を放つ。
 腹を抱えている赤土と呼ばれた男は、痛みを抑えながら咳き込む。
 「いー加減に諦めたら。しつこい男は嫌われるよ」
 「お前に用はない。邪魔だ、すっこんでろ」
 「そう言われてもねぇ。ちゃんとオレを通してもらわないと」
 どこぞの親父かよ、あんたは。それに、通してってどういう意味なんだ。
 しかも二人でおっぱじめちまった。アタシが来た意味なくないか。これ。
 だが、心配無用、ということじゃないが別の問題が発生する。どこから聞きつけたのか、別の連中がやってきたのである。
 「よお、紅葉。赤土とやり合ってる聞いてよ」
 「あっそ。それで」
 「つれねぇな。こんなイイ女ほったらかしにして、赤土の奴は何やってんだか」
 「ゴタクはどーでもいい。何の用だ、竜間(たつま)」
 背後に回していた腕を振りかざす野郎。鉄パイプか何かを隠し持っていたことは薄々わかっていたため、後ろに飛んでかわす。正々堂々と挑んでくる赤土とは裏腹に、勝つためには手段を選ばない奴だからな。
 「ちっ、相変わらず勘が働くな」
 「てめえのセコさはわかってるからな」
 「ふん、まあいい」
 竜間は左手を上げると、連れてきた舎弟に周りを囲ませる。ざっと十数人はいそうだ。
 周囲の雰囲気が変わったことにいづいたユキたちは、喧嘩をやめアタシの元に。
 「竜間、俺が先だ。邪魔するな」
 「うるせえ。お前ら全員気にいらねえんだ、やっちまえっ」
 ったくもう。何でこうもややこしくなるかなっ。
 アタシとユキ、赤土は互いに背中を合わせて円陣を組む。
 外からは拳やらナイフやらがやってきていた。

 

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