自由な色彩 試験開始・火編

 試験もいよいよ最後の段階。今までのペースならば時間に追われることもなさそうなので、フィラは上機嫌で進んでいる。しかも本人にとっては一番得意としている火属性。精神的にも余裕が生まれたのだろう。
 とはいえ、ここで力を抜いてしまっては受かるものも受からない。フィラは集中力を高めながら、東へとむかっていた。
 土の試験場に進路をとっているときと同じように、薄黒くなっているけむりが目をしぼませてしまう。今回はぬらした布を呼吸器官のところにあてているが、それでもけむたいらしい。
 「気のせいかな。さっきよりも黒っぽい気がすんだけど」
 自然現象なのでしかたがないが、文句のみっつはいいたいフィラ。とりあえず目的地を見つけるため、飛行位置を低くたもち姿勢も曲げる。
 すると、目の前から似たような格好をした黄色い点が見えてきた。何かと思い瞳をこらしてみると、風で動かされている布の生地が映る。フィラは、すぐさま監視員だろうとさとった。
 入れ違いにならないよう低速で飛んでいると、同じように筆に乗った黄色いローブを着た人が3人やってくる。
 「受験生の方ですよね。火属性の試験では個別に見ることになってますのでご案内します」
 「はい、お願いします」
 授業で別々にやるとはうかがってないけど、それは生徒にはわからない範囲のこと。もしかしたら今回は試しに導入してるのかも。
 このように考えたフィラは、迷わずついていく。
 頭の中に一週間前に会った憧れの人のことを思い描きながら、フィラは音符をだしそうな雰囲気で進んでいく。行動をともにする監視員は、普段から話さない人なのか会話がない。
 やってきた先は、黒煙をまき散らしている山のいただきだった。先ほどから人の視界をせばめている犯人であり、ここが今回の試験場らしい。
 「見えにくいですが、足元に下りるために整備された道があります」
 「え、この中にはいるんですか?」
 「はい。ああ、ご安心を。噴火はしませんから」
 ほっと胸をなでおろすフィラ。筆をしまうと、ゆっくりと歩きだす。
 落ちないように気をつけながらも、フィラは自然の壮大さを感じていた。人間や動物、そして植物は自然が創造したと授業で習ったし、火山のように人の手で自然を動かすことはほぼ不可能に近い、ということも。
 偉大なる母とも言い換えられよう存在を刺激し動かすことができるのは、マジシャンの場合、自身のマジック・パワーを生態系に同化させることになる。いわば、完全に自然界の先端といえよう。
 そのように考えれば、ある意味陸上や空、水の中にいる生命体とは別の存在ともとれなくはない。
 記録ではここ数百年、自然を動かすことができた人間はいない。歴史上、つい最近生まれた類まれなる力をもつナルニムだけが成しえる偉業だ。
 歴史学を反復させがら、フィラは煮えたぎるマグマよりも熱い気持ちを宿らせていく。
 あまり整えられていない道につまずきながらも、フィラは案内されるままについていく。相当奥深くやってきたらしく、頂上が酒瓶の底ぐらいの大きさしかない。
 「すみません、あとどれぐらいでしょうか」
 「もう少しですよ」
 女の人だろう声は、そっけなく返してくる。やる気がないのだろうか、その冷たさに不安を抱くが立場上どうしようもない。
 フィラは、内にある光と闇のバランスを保とうと焦りはじめる。
 無言のまま歩いていると、徐々に道が広くなっていく。斜面になっていた足場がまっすぐになったとたん、監視員たちがたちどまった。
 「試験官はあちらにいらっしゃいます。ここからはおひとりでお願いします」
 このように語られ、確認するフィラ。すると、目の前には雲の上の人がいるではないか。
 興奮してしまうが、受験の言葉を浮かべ軽く深呼吸をする。熱風にのどがやられない程度に息をすうと、周囲との温度差が広がった。
 「いらっしゃい。待っていたわ」
 「ナ、ナルニムに見ていただけるなんて感激ですっ。あ、ちが、そうじゃなくって」
 「うふふ、いいのよ。そう言ってもらえると嬉しいわ。落ち着くために少しお話しましょうか」
 ナルニムに促され、フィラはできうる限りの力を抜く。
 「そうね。まず筆を預けたら。ひと呼吸置けば力も出しやすいと思うから」
 「あ、はい。これお願いします」
 道にいた監視員もナルニムに敬意を払っているのだろう。彼女が話している間に移動した白きローブは、フィラの持つすべての筆を両手で受けとる。
 すると、その人はナルニムにむかって一礼し、また位置に戻っていった。
 「フィラのことはまるで本物の妹みたいに思っているわ。今日もこの日を迎えられて嬉しいもの」
 「あ、ありがとうございますっ。そう言ってくださるなんて本当に幸せですよ」
 「まあ。あなたは本当に可愛いのね、素直で優しくて」
 「そ、そんなことないですよ。ナルニムのように魔法使えないし美人じゃないし薬草の調合は苦手だし」
 普段はふたりきりで話す機会がないので、フィラは顔を真っ赤にして指をもてあそぶ。それを見たナルニムは、慣れた対応で笑顔を崩さない。
 彼女は手を口元に持ってきながら、
 「ところで、ロージャとは一緒じゃないのね」
 「え、ええ、今日は試験ですし」
 「それもそうね。普段はどうなのかしら」
 「普段ですか。いつもはもうひとりの友達と一緒に勉強したりお昼ごはん食べたりですけど」
 「そうなの。学校はちゃんと通っているのね」
 「ええ、まあ」
 どうもおかしい。気が落ち着くどころか緊張感が増えてる気がする。
 このような黒い思考を回したフィラだが、とりあえずそのまま話を続けた。
 「ロージャは私のことを慕ってくれないの。でも、あなたがいてくれるならいいわ」
 「ナ、ナルニム」
 「ねえフィラ、あなた、私が私でなくなるのが嫌でしょ。ならここで力を貸してくれるわよね」
 再度フィラの名をだした途端、ナルニムは肉を焼くようにじりじりと近づく。彼女は、このときようやくロージャの言葉の意味を考えた。
 必要以上に近づくな、と。
 「ちょうどよかったわ。あなたを餌にしてロージャをおびき出せば消せるもの」
 「じょ、冗談でしょナルニム。希なるマジシャンのあなたが、人殺しなんて道はずれななことするわけないっ」
 「あら知らないの。力をつけるのに一番手っ取り早い方法は、人の命を力の結晶に変え、それを吸収することなのよ」
 唐突に奈落(ならく)の底へと落とされたフィラは、対処法がみつけられないでいる。精神も場所も暗い霧に包まれる中、必死で脱出口を捜そうとするが肝心な筆がないためフィラでは魔法もとなえられない。
 様子を楽しむようにして見下ろすナルニムは、特製のワンドを取りだした。先には、以前フィラがナルニムに対する想いを抱いていたような色の宝石がくっついている。
 ナルニムはそれでヘキサグラムを描いた。すると、円と星でかたどられた絵から、炎そのものと言うべき姿の獣が出現。腕をおろした彼女の隣に並ぶ。
 「綺麗な子でしょ。フレイムウルフっていうの」
 「そ、そんな。フレイムウルフは精霊たちが住む世界とこの世界を結ぶうちのひとつ、炎の門を守ってるって」
 「よく知ってるわね。そうよ、私がとある人物に頼んで連れてきてもらったの」
 自慢話をするナルニムは、いかにも自分が連れてきたかのように語る。フィラには、どうしてそのような神聖な獣がナルニムについているかなどどうでもよかった。それよりも、誰かに今の現実を否定してもらうほうが先決だったのだ。
 「これからも予定がつまってるのよ。早くすませたいからあなたたちも手伝ってちょうだい」
 号令のあと、監視員の格好をした教師たちがローブをはぎとる。3人の女性は、先生の資格をもっていない。すべてナルニムにはめられたのである。
 圧倒的不利な状況の中、多方向から攻撃魔法がとんできた。フレイムウルフからは口から放たれる炎の弾(たま)が。散らばった三人の女性からは最上級のウィンドが人数分。
 生きるがために動くフィラ。しかし4対1、しかも実力では個々でもかなわない者が相手。
 わざとかわしやすい速さで繰りだされてくる風の刃と炎の玉は、少しずつ傷つけていき、やけどを負わせていく。
 じわじわと気力も体力も限界に近づいたとき、体が傾いてしまった。ウィンドが彼女のももを切り裂く。
 フィラは痛さと悔しさのあまりうずくまり、ナルニムをにらみつけた。
 「あらやだ、偉大なマジシャンにむかってその表情はよくないわね。まあいいわ」
 高笑いしたいかのように言い放つナルニムは、手にしたワンドでフィラをさす。
 「どうせならもっと面白いことをしましょう。フレイムウルフ、あの子を生きたまま食べてあげなさい」
 「なっ」
 「ナルニム様、いくら何でも」
 「いいじゃない。私を慕ってるのなら楽しませてもらうのが筋ってものでしょ。それとも、あなたもあちらに仲間入りしたい」
 理不尽ないいがかりに、付き人の女性は黙りこんでしまう。助けてあげたくとも、自身も犠牲になるのはご免こうむるからだろう。
 付き人を下がらせ、一歩前に出たナルニムは、フレイムウルフに行くよう指示。フレイムウルフは主の顔を見、頼りない力で歩きだす。
 「何をしているの。早く殺して力の結晶にしてちょうだい」
 鈍い部下にいらだったナルニムに、鼻を鳴らすフレイムウルフ。仕方なく飛びかかった後者がフィラに当たる直前、
 『いい加減にしろよこのごうつくばりっ』
 声と共に結界がはられた。聖獣すらはじき返してしまったそれは、プリーストがあやつる聖魔法だった。
 『フィラ、大丈夫か』
 「え、え、ロージャなの」
 『そうそう。んま、話はあとだ。渡したペンダント出してもらえる。ポシェットか何かに入ってるだろ』
 「う、うん。表にだせばいいの」
 『そそそ、表にだして。じゃないとちゃんとした魔法がとなえられないから』
 細かなことまで回せる状態ではないフィラは、言われた通りにロージャからの贈り物をだす。いつのまにか光っていたピンク色の合格祈願は、白き希望となって大きくなっていく。
 やがて人形(ひとがた)となった光は、フィラにとってなぜか懐かしく思う幼なじみに変わっていた。
 「ったく、こーなると思ったよ。あんたもこりないなぁ」
 「ロ、ロージャ、どうしてここに」
 「ごアイサツなおばさんだ。あんたの薄汚い考えなんてミエミエだっつーの」
 彼の出現に、肉親とその下にいる人たちがざわめきだす。血筋をもつふたりは約ひと回り離れているが。
 どういうわけか、態度が逆転している。
 「んま、ここまでやられちゃあオレだって黙ってないよ。そこの人たち、逃げるんだったら今のうち」
 「ひっ」
 「ちょ、ちょっとあななたちっ」
 ロージャがフィラを支え治療している間、いっせいに逃げ出す付き人たち。ロージャの迫力に負けたのか、悲鳴を残して逃げ去っていく。
 一方のナルニムは、移動に使うヘキサグラムを描くが、ロージャによって無効にさせられる。
 「あんたは逃がさない。今までのツケ、きっちり払ってもらおうか」
 「ふ、ふん。ガキの分際でっ。フレイムウルフ、奴らを殺しなさいっ」
 「やめてよっ。その子、嫌がってるじゃない」
 「うるさいわね、あなたたちが死ねば私はさらに力をつけられる。力があれば何でも欲しいものが手にはいるのだからっ」
 「呆れた。ガキはそっちだろ」
 言うまでもないとばかりの様子のロージャだが、口から出ずにいられなかったようだ。ため息とともに、彼も見たことがない形状のワンドをだす。
 「オレは別にいいけど。そのほうが確実だしね」
 「くっ」
 悔し紛れとばかり、最上級の炎を放つナルニム。軽々とよけたロージャは、隣にフィラがいると思えないような動作で応戦する。
 フレイムウルフはどうしてもナルニムに逆らえないようで、着地すると同時に爪で攻撃。しかし、それもフレイム・バリアに阻まれなかったことにしてしまう。
 自分の思い通りにいかずだだをこねたのか、ナルニムは見当違いのところへ火属性の魔法をかけはじめる。その先には、煮えたぎるマグマがあった。
 「こんなところで死にたくないわ。私は選ばれた存在なのよ」
 「ちょ、ちょっとロージャ」
 「平気だって」
 何の根拠があって語っているのかわからないが、ロージャの口は笑みを崩さないでいる。
 フィラはというと、もはや次元の違う展開についていけなかった。
 作戦でもあったのだろうか。魔法をとなえ終えたナルニムは、ワンドの宝石部分にふれ赤く光らせる。
 フレイムウルフは、どうやら命令されたようでロージャの前に降り立つ。それから右に左に動きはじめた。
 ロージャとフィラの目が聖獣にいっていると、突然ふたりの間の大地が盛り上がった。さすがに対処できず離れ離れになってしまう。
 同時に、ロージャにはフレイムウルフが、フィラには最上級のフレイムがむかってきた。
 「フィラッ」
 名前の持ち主は左側に転がってかわしたが、フレイムウルフが彼の左腕を引き裂いた。
 「ロージャッ」
「オレはいい、早く筆を使って空へ逃げろ」
「筆は持ってかれちゃったし、ロージャを置いていくなんでできないよっ」
 傷口を押さえる幼なじみに駆けより、服の端をちぎって止血をするフィラ。どうすれば状況を好転できるのか必死に頭を回すが、よい案は浮かばない。
 実質は2対1の状況。ひっくり返せれば何とかなるんじゃないか。魔法が使えないマジシャンにできることはないのかな。
 ふと、フレイムウルフが視界に入ってくる。足を大地から離したくないように、見えなくもなかった。当然といえば当然だろう。
 何とかするなら、こちら側。
 フィラはナルニムに走っていく。ロージャの声が聞こえたが、無視して彼女に突進していったのだ。
「バカな子ね、死になさいっ」
 まるでヤリのような氷柱が大小形成され、フィラに投げつけられる。小さいものをあえて受けながらも攻撃魔法群を突破し、ナルニムの持つ杖をつかむ。子供の取っ組み合いのようになるが、普段から弟と妹の世話を見ているフィラのほうが一枚上手だった。おもちゃを奪いとるようにワンドを抱え込むが、ナルニムは髪を引っ張り行かせまいとする。
 右腕をつかまれてしまい走れなくなったフィラは、持ち物を左手でフレイムウルフのほうに投げつけた。彼女の意図を読み取ったロージャは、鼻で杖をいじっている炎の獣のほうにすっとんでワンドを手にし、宝石部分を見る。
 「封印石か、お前の意識がこれに入ってるんだな」
 悲しそうに、クゥン、と鳴く。
 従わせたい者の意識を操る邪法のひとつを、ナルニムは使っていたのだろう。封印石は元来、精霊の力を中に入れ、引き出すために使用されるもの。フレイムウルフは火の精霊と人をつなぐ聖獣とまで言われている存在で、人間に従ったりはしない。
 「しまったっ」
 「まあ、あんたの力じゃこうでもしない限り無理だろうからな。フィラから離れてもらおうか」
 「ふん」
 フィラをはがいじめにすると、腰からナイフをとりだし、首元に近づけた。
 「大人しくなさい。この子を死なせたくなかったら、後ろの下がるのよ」
 舌打ちをし、ゆっくりと下がっていくロージャ。フレイムウルフもなぜか従っていくが、後ろには活発化したマグマがある。
 「もっと下がってちょうだい。落ちるまで、ね」
 「いい加減にしてよっ」
 人質が暴れるが、先ほどの手傷のせいで力が入らず、首が絞まるだけ。
 「あなたにはわからないでしょうね。私がどんな想いで生きてきたかなんて」
 「え」
 フィラからは表情は見えなかったが、今までに聞いたこともない、悲しい声だった。
 息を吸う音が耳に入ると、
 「どうしたの、この子を助けたくないのかしら」
 「今なら引き返せるぜ、まだ、な」
 風が、彼女たちの、とくに発言者の従姉弟の髪を揺らした。
 ナルニムの力が緩むと、フィラは全身を使って突き飛ばした。よつんばいになりながらも、距離をとろうとする。
 盾をなくした彼女は、再び捕らえようとフィラの服を引っ張ろうとする。
 だが、失敗に終わった。どこからか伸びてきたムチに行動を止められたのだ。
 「わたしの存在、忘れてるでしょー」
 ムチを右手に、にっこりと笑うクリスターニャ。彼女は炎をまとった馬、フレイムホースという聖獣の一匹にまたがっており、足元にはフレイムウルフと見た目はそっくりな獣もいた。
 「おせーんだよ、何してたんだ」
 「ひっどーい。せっかくナイトにしてあげようと思ったのに~」
 ナルニムの動きが封じられたと同時に動いたロージャは、火の獣とともにフィラの元に駆け寄り、回復魔法を施していた。
 一方、炎の聖獣は、ナルニムにむかってうなり声を上げている。
 彼がフレイムウルフの頭に手をおくと、遠くから声がするのに気づく。やがて音は大きくなり、姿を見せ始めた。
 マジシャンやプリースト、スピリッチの教師たち、それに警備兵も続々とやってきたのだ。
 息を切らせながら、先頭にいる教師は、
 「いったいどういうことか説明してもらおうか」
 「こ、この子たちが私をおとしめようと襲ってきたんですっ」
 「なっ、違いますよ。全然違います逆です、ナルニムが私を殺そうと」
 「嘘をおっしゃいっ。ならこの状況をどう説明するというの」
 あくまで被害者をよそおうナルニム。今まで周囲にしていたのだろう完璧な演技力で、権力者たちにとりいろうとする。
 相手が相手なだけに、難しい顔をする一同。とあるスピリッチの教師資格をつけたひとりが、鳥のくちばしを平べったくし大きくしたような形をした何かをとりだした。
 「ナルニム、これはあなたのでしょう」
 「え」
 「それはオレのですよ。風の精霊が仲良くなった証にって」
 「じゃあ、どういうものか説明してもらえるかい」
 「音を大きくしてより大勢に聞いてもらうアイテムです」
 「正解だ。実はこれ、いつのまにか仕掛けてあってね」
 質問をした物腰の柔らかい教師は、ナルニムを徐々に追いつめていく。他の教員たちも、確信がいったかのように準備を始めた。
 「僕はアイテムをもらえるほど仲良くないけど、教師たるものどういうものかぐらいわかる。話は初めから聞かせてもらったよ」
 「さあ、大人しくついてくるんだ」
 「じょ、冗談じゃないわっ」
 自分は悪くないとばかりに矛先の炎をフィラにむける。いかに力が強かろうと、筆やワンドなどの媒体なしでは威力は半減してしまう。
 マジシャンの教育担当者がひとりフィラの前に、ロージャは見納めのごとくアース・ウィップを放つ。地をはう蛇とかした彼の魔法は、ナルニムの体を束縛し沈黙させた。
 念のため、彼女に質問したスピリッチが見張りとして風の精霊・ウィンをつける。呼びだされた子供の姿をした精霊は、先生のほおにキスをすると、連行される人物についていく。
 彼らの姿が見えなくなる前に、
 「先生方、ご協力ありがとうございます。詳しい話はあとにして、一刻も早くここを離れてください」
地響きがこだまする。
 「んー、もしかして噴火しそうな感じー」
 「話が早いじゃん。あのクソ女が最後の最後に刺激したからな」
 「何だってっ。まずいぞ、この近くには町がある、今からじゃと手も間に合わない」
 「オレが沈静化させます。だから外にでて火山灰が町におりないようにしてほしいんです」
 「何をおとぎ話のようなことを言ってるんだ。ナルニムがいない以上、誰も」
 「いいえできます。むしろオレじゃなきゃできないことですよ」
 近くにいた警備兵の人に、ロージャは自信を持って語る。その目には信念が宿っており、周囲には火と土をつかさどる精霊がやってきていた。
 「まさか、サラマンダーとノームを呼んだのかい。君が」
 「そうです、呼んどきました。最高位の精霊たちの力を借りれば不可能なことじゃないでしょ」
 精霊は、教育の受けたスピリッチにしか見えない。先をきって誘導した教師は、納得のいく表情をみせ、同等の立場の人に説明。上に移動用のヘキサグラムを描いておく、といい、フィラとクリスターニャを連れて去ろうとした。
 しかし、そこには待ったの号令がはいってしまう。
 「ちょ、ちょっとロージャッ」
 「大丈夫だって。またあとで~」
 「ねえねえ、その子も手伝いたいみたいだよー」
 ロージャのそばでおすわりをしながら、しっぽをふる炎の聖獣。クリスターニャは彼からワンドをとると、腕力だけで真っ二つにした。宝石の部分を彼に投げつけ、他をマグマの肥やしにすると、フレイムウルフと同じ姿の茶色をもつ聖獣に話しかけ、ロージャの元に行かせる。
 足軽に歩きだすクリスターニャは、渋るフィラを馬の聖獣に乗せて脱出した。

 

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