東京異界録 第3章 第9録

 楓や雪祥(ゆきひろ)たちが敵と戦っている最中、保健室にふたつの気配を感じとるクサナギ。
 しかし、彼にとって危険ではないため、特に何もしなかった。
 「はぁい、ダーリン。久しぶりっ」
 「誰がダーリンですか」
 「んもう、クゥちゃんてば。ノリが悪いんだからぁ」
 ため息をつきながら立ち上がったクサナギは、プリムを無視し明日香と視線を合わせる。
 「主人(マスター)、内容は聞いていますね。無理はしないように」
 「大丈夫。加具那(カグナ)さんのおかげで体力も霊力ももどったのよ」
 「さすがですね。でも、油断はしないようにして下さい」
 加阿羅(カーラ)がつくとはいえ何が起こるかわかりませんから、とクサナギ。完全に保護者である。
 「加阿羅(カーラ)って、青い人。それとも緑の人」
 「緑のほうです。プリム、頼みましたよ」
 「やっぱクゥちゃんは無理そうなのね」
 「ええ。動くなと言われていますし、後々に響くからと釘を刺されました」
 そうなのね、と、少し真面目な顔をするプリム。固い雰囲気を背伸びで和らげると、
 「そうだ。クゥちゃん私ね、加具那(カグナ)ちゃんから拠り代関係のこと、全部聞いたのよ」
 「全部、ですか」
 「そ。彼ら一族に関することとその詳しい経緯」
 吹くはずのない風が、サァッ、と、ほおをなでる。
 「時間的な問題でですって。いずれあなたも話すから伝えといてくれって」
 「わかりました」
 「プリム、何のおはなし」
 「オ、ト、ナ、の話よ」
 「ズルいっ。わたしにも教えてっ」
 「もうちょっと大人になってからね~」
 キャッキャッ、とじゃれあう女子たち。見慣れた風景を目の当たりにし、何となくほっとするお守り隊その一は、自分がいない間に色々なことが起こったことを悟る。
 そして、時間の流れという抗えないものも感じた。
 『来たようだね』
 声とともに姿を現した加阿羅(カーラ)。明日香は反射的にプリムの後ろに隠れてしまい、女性の手を掴みながら、ゆっくりと顔を出した。
 おずおずと会釈した少女に対し、長男はにっこりと笑う。
 「加具那(カグナ)が余計なことを言ったみたいだけど」
 「あ~ら、手間が省けていいじゃない。どうせわかることよ」
 「確かに。そうそう、余計で思い出した。妖怪クラスのも結構いるから気をつけて」
 「話が違うじゃないの。ちょっとしかいないって言うから主人(マスター)と一緒に来たのよ」
 困惑と怒りが同居しているような表情をしながら、はあ、と返事した加阿羅(カーラ)は、頭に手をやりながら、
 「あの人がちょっかいを出したんだ。だから加具那(カグナ)に頼んだ以上のが入っている」
 「あの人って誰よ」
 「あれ、会っていませんか」
 クサナギと加阿羅(カーラ)は顔を合わせてしまう。
 「女性が来たというのに珍しい。何かあったのですかね」
 「さあ」
 「だから、誰なのよ」
 「そのうち会う。説明するのが面倒くさい」
 大きな青い息とともに、眉を吊り上げる加阿羅(カーラ)。目の位置が随分下にある明日香から見ると、怒っているように見えた。
 「敵ではありませんよ。ただ、加阿羅(カーラ)がちょっと苦手としている人物でして」
 「あらま。あなたにも苦手なタイプがいるのねえ。まあいいわ」
 プリムは服をなびかせ、保健室を去ろうとする。
 「ここにいても仕方がないんでしょ。加阿羅(カーラ)ちゃん、エスコート頼んだわよ」
 「仰せのままに。姫君」
 と、誰かと違い、まるで王子のような振る舞いと表情をする彼。意地悪そうにウィンクした加阿羅(カーラ)に対し、プリムは面を食らってしまった。
 だが、すぐに微笑むと、
 「やっぱり一筋縄じゃいかないのねえ」
 「さて。何のことやら」
 彼女を追い越した見た目は少年の子は、すっかり置いてけぼりになっている明日香を呼び、保健室の外へ。
 クサナギに手を振って見送られると、他のパーティーと同様に校内を歩いていく。だが、明日香に至ってはそれ以上の好奇心があるらしく、キョロキョロとしていた。
 「へんな結界ね。はじめてみた」
 「これは特定のを閉じ込めておくタイプなのよ。普通のとは逆の作用をしてるのね」
 「ふうん」
 「明日香ちゃんは攻撃術は使えないんだっけ」
 「つ、使ったこと、ない。お人形、に力、いれるしか」
 どうやらこの子の人見知り度、結構高めだな、と思った加阿羅(カーラ)は、少女に合わせて会話を展開していく。しかも、怨鬼(おんき)たち全てを片手で相手をしながらであった。
 その様子を見たプリムは、要(かなめ)の肩書きは伊達ではないと思う。
 しかし、女性のカンとも呼ぶべきところは、何となく独特のもろさをも感じとっていた。
 その視線を知ってか知らずか、加阿羅(カーラ)はしゃがみ、目の高さを合わせる。
 「ちゃんとフォローするから、敵を見つけてみようか。近くにいるんだけど」
 「え、えーっと。あの扉の、奥。かな」
 想像したより早い回答に、加阿羅(カーラ)は、きょとん、としてしまう。そして、頭をなでると、彼女の能力の高さを認めた。
 だが、彼が勢いよく扉を開けた教室には誰もいない。もちろん、妖怪たちには答えはわかっている。
 「さあ主人(マスター)、加阿羅(カーラ)ちゃんの鼻をあかしてやりましょ」
 「どういう教育をしているわけ」
 「あ~ら。女の子は明るくかわいく強かに、よ」
 ふたりが世間話をしている間、明日香はとある場所を見つめていた。

 

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