東京異界録 第3章 第5録

 カーラ君が術をぶっ放したあと、私たち人間組は思わず見合わせる。しばらくすると、放心状態がとけたため、それぞれのグループに分かれて行動を開始。習うより慣れろという言葉通りに頭と身体を動かすことに。
 た、戦う準備自体はしてあるんだけど、ね。
 「あんなんでビビるなって」
 「ビビってはないけど、驚きはするでしょ」
 「んあー。アイツはいつもマイペースだからなあ」
 何するか分からねえところがあるし、と彼。それもそれで怖いと思うんだけど、きっと弟にとってはいつものことなのだろう。
 まあ、私から見ればカヌス君もそうなんだけどね。
 「そういえば、見極めるって言ってたけど、どういうことなの」
 「どうって。言葉通りだぜ。あそっか」
 何も知らないんだったな、と彼。うーん、とうなったあと、概要だけ伝えてくれる。
 次男坊いわく、私の力は、人間にしてみればとんでもないもので、場合によっては世界を滅ぼすという。
 つまり薬と同じで、使いかたを誤ると大惨事になるのだとか。
 「そ、そんな突拍子もないこと、言われたって」
 「だから黙ってたんだ。すぐに受け入れられるとは思えねえし、判断もできねえだろ」
 終わったら詳しく話せるだろうよ、と次男坊。彼らは、私たち姉弟が自ら判断出来る年齢になるまで待っていたのだという。
 うう、何だか胃が痛くなってきたわ。
 「んま、小難しいこたあともかく。相手がどういう状態なのかを聞き出せば、初めはオレが判断してやるよ」
 そうしてもらえるとありがたい。たぶん、相手が力を使って何をしようとしているのかが知りたいんだと思うけど。
 ため息で返事をすると、西校舎との連絡通路まで移動していたことに気づく。まあ、通路といっても長いものではなく、建物をつなぐ距離しかない。
 で、早速お客さんが来たらしい。
 怨鬼(おんき)もいるが、人型をなしている怨霊もいる。両者の違いは力があるかないか、人間の姿になれるかどうかで大半が決まる。また、怨霊の中でも言葉が分かるかどうかで上か下かが判断できるのだ。
 私たちは戦闘体勢に入り、力を温存するため物理攻撃だけで対応。爪の威力も増しており、もはや怨鬼(おんき)は敵ではなかった。
 しかし、怨霊クラスになると、まだ直接攻撃だけでは倒せず、ジュツを交えるが。
 全て片付けると、カヌス君の左手を見てしまう。いつもと違う武器を使っているからだ。
 「ああ、こいつか。剣のほうが威力高えだろ」
 「剣も使えるんだ」
 「まあな。伊達に長く存在してねえよ」
 彼が言うには、飛道具とジュツ、そして万が一の時のために攻撃力の高い剣とヤリも習得しているらしい。もっとも、それぞれの強さはカーラ君のほうが上だとか。
 「ま、臨機応変に対応できるよーに仕込まれててんだよ。伽糸粋(カシス)もな」
 はあ。口で言うのは簡単だろうけど、ね。
 私は、まばたきを、ゆっくりとしか出来なかった。
 その後も異形の者たちとの闘いはあれど、人の姿はない。まあ、開始直後に当たりを引いても困るのだが。
 「能力者ってさ、どんなタイプなのかな」
 「さあな。いろんなのがいるからよ」
 というのも、レイリョクを持っていても全員がジュツを使える訳ではないらしい。レイリョク自体はあっても、それを得物にのせて攻撃する方法もあるそうだ。
 もちろん、レイリョクがまったくないユキの場合は特例で、特殊加工された脇差を使っている。
 それにしてもカヌス君、もしかして不機嫌なのかな。口数が少ないような。
 「お~お~。こんな状況でデートかい」
 余裕だねえ、と男の声。同時に複数のボールがこちらに飛んできていた。
 お互い左右に別れてかわすと、目の前に同じ学校の制服をした男子生徒が現れる。顔を見るが覚えがない。
 「E組の有田だよお。地道~に棲息してるから知らないだろうけど」
 「うん、ごめん。知らない」
 「だろうねえ」
 のんびりしている性格なのか語尾が間延びしている。が、雰囲気から結構な手練れのよう。
 しかし、右手で二個のボールを回しながら、相手は顔だけ笑っていた。
 「藜御(あかざみ)さん。イキナリで悪いけど、ちょいと一緒にきてもらいたいんだよねえ」
 「何でよ」
 「またまたあ、しらばっくれちゃって」
 そう言いながら、有田という奴は、一つのボールを投げつける。すると、十のものが現れこちらに向かってくるではないか。
 私より速く腕を出した相方は、目の前に水色の結界を出現させる。
 モウモウと立ち込める煙が消えると、
 「てめえ、あの女のパシリか」
 「ひどいなあ、せめて使いっていってよ」
 何者かなあ、君は、と変わらない笑顔のまま向かってくる相手。右手には新しくナイフを出していた。
 な、何だかやりにくいんだけど、もう。まるで誰かさんみたい。
 そのように思っている間カヌス君が先手を打ち、金属同士が切り結ぶ。ぶつかった直後、私は左側に抜けて背後を取った、つもりだった。
 体を彼らに向けた瞬間、複数の小さな衝撃が私を襲ったのである。
 「がっ。な、なに、これ」
 「楓っ」
 「あれえ、見えなかったの」
 思わず二人との距離を開けて見たものは、高速に動いているスーパーボールのような存在。Wの字を形成するように動いており、人が通れるスペースがなかった。
 しかも逆側にも同じ現象がある。
 「こいつ片付けるから、そこにいてねえ」
 つい先程まで会っていた誰かさんを連想させる笑顔で、有田は言った。

 

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