東京異界録 第3章 第2録

 コンビニに寄って戦闘食を手に入れると登校する私たち。まあ、正体はお菓子だけど。
 朝から体操着に着替えると、全校生徒は体育館に集合し、コウチョーセンセーの話をあくびしながら聞いたあとは、張り出されているトーナメント戦の紙を確認。
 当然男女別になるので、校庭と体育館の二ヶ所、合計四つのコートで試合をすることになっている。
 で。私のクラスの初戦は、どういうわけか男女とも同じ体育館で、時間帯もひとつだけしかずれていない。つまり、隣にいる状況なのだ。
 ま、まあ、有事の際には助かるんだけど。ここまで来るとどのように反応してよいのかわからなくなるわ。
 ふと見ると、翔(しょう)君が壁に寄りかかりながら試合を見ている。目が戦っているときと同じように、鋭かった。
 「どうしたの。何かいた」
 集中力が途切れてしまったらしい彼は、いつもののほほんとした笑顔に戻る。
 「別にいないよ~。どういう風に動いているのか見てただけ~」
 「どうって。どういうこと」
 「ん~。敵の動きを分析してるって感じかな~」
 表情と言葉がかみ合ってませんけど。
 「君もやってみるといいよ~。いい訓練になるからね~」
 「連中と戦うときってことよね。バスケと全然関係ないんじゃないの」
 「動きを見るってところは共通してるよ~」
 う、うーん。イマイチよくわからないんだけど。そのうちわかるようになるのかな。
 話しているうちに、女子のほうが試合時間になったようだ。
 「相手に体当たりしないようにね~」
 思いっきり足を踏みつけた後、私はみんなと合流した。
 「藜御(あかざみ)さん、翔(しょう)君となに話してたの」
 「別に何も。相手を見てたんだって」
 「へえ~。あそこは確か、男子が勝ち上がったときの対戦相手だよね」
 そ、そうなんだ。さすがバスケ部マネージャーの宮田さん。そこまで気が回らなかった。
 「ま、テキトーにやろやろ」
 あんまし力が入っていない私たちだが、コートの中でスタンバイする。ピーッと笛がなった瞬間、何者かの視線を感じた。
 試合が終わり、三対一で私のクラスが勝利。ノリ的に喜ぶ女子たちは、水分を求めて各自の荷物をあさる。スポーツドリンクを飲んでいると、瞬(しゅん)君が姿を見せた。
 「あれ、楓。メガネはどうしたんだ」
 「危ないから取ったのよ。ぶつかって割れたら大変だし」
 「あー、なるほどな」
 「ところで今までどこにいたのよ」
 「ヒマだから寝てた」
 どこでだ、どこで。
 「翔(しょう)に呼ばれたからよ、もうそろそろ試合なんだろ」
 フケると殺されっからよ、と次男。そんなにやる気があるんだ、長男は。
 「そうだ。これを機会にコンタクトにすりゃいいじゃねえか」
 「え~。だって管理が大変だって聞いたし、目に異物入れるの怖いし」
 「そうか? 翔(しょう)のほうがおっかなくねえ」
 「それとこれは違いますー」
 「そんなモンかよ。せっかく美人なのに、もったいねえじゃん」
 ぶほっ。
 「何やってんだよ」
 「あんたがヘンなコト言うからでしょっ」
 慌ててティッシュで床を拭く私。いかんいかん、ベトベトになってしまう。
 「別に何も変なコト言ってねえだろ。本当のことじゃねえか」
 「いいから、早く試合に行きなさいってっ」
 マジで恥ずかしい。周りに見られてること気づいてないのかコイツは。
 背中を押しながら、私は瞬(しゅん)君をコートへ押しやり、ちょうど翔(しょう)君も来ていたので、彼に託した。
 はあ~。褒めてくれるのは嬉しいけど、ね。目つきが凶悪だってオプションつきだけど。
 心臓の鼓動が落ち着きを取り戻していく最中、男子は十五対一で圧勝。宮田さんいわく、一番背の高い翔(しょう)君が警戒されたらしいが、その分、他のメンバーが動きやすかったらしい。
 もしかして、それを見越してたのかな。のほほん顔の割には策士っぽいし。
 そして、彼らの試合中でも私は視線を感じた。シキを放って校内を調べるも、全然収穫がない。
 どうも邪魔されているみたいなのよね。私の使いかたが下手なのもあるだろうけど。
 男子たちに飲み物を渡すと、次の試合まで時間があるため、私は体育館の外に出た。少し冷たい空気が体を冷やしてくれる。
 いや~、それにしても遠くが見えない。眼鏡がないと本当に不便だわ。
 ま、戦うわけじゃないからいいんだけどね。
 肺いっぱいに新鮮な空気を送り込むと、背後に何かを感じた。慌てて振り返るが誰もいない。
 よくよく感じてみると、上から誰かがこちらを覗いているようだ。体育館の二階は、上から閲覧できるように、今日は解禁されている。
 相手は目が合ったと思ったのか、カーテンでさえぎる。シキを使おうにも、あの子は今お調べ中だ。
 「何なのよ、一体」
 一応報告しておこうと思い、戻ろうとすると、男子生徒がこちらにやってくる。
 その姿は、とても見覚えのあるものだった。
 私は思わず固まってしまい放心していると、男はにやっと笑い、片手を挙げる。
 「よお、紅葉」
 「ちょ、ちょっと。何であんたがここにいんのよっ」
 夜の、しかも人がいない場所でしか会ったことのない奴が、目の前に立っていた。

 

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