東京異界録 第3章 第15録

 カヌス君が大怪我で離脱すると、私はカーラ君と明日香ちゃん、そしてプリムのチームに合流する。今までとくに変わったことはなく、話をしながら歩いていた。
 「あ、あの、あの」
 と、下のほうから声をかけられる。主は明日香ちゃんで、肩掛けポシェットを握りながら、えっと、えっと、と口にする。
 何だか昔の自分を見ているみたいだわ。
 「こ、これ。よかった、ら、使って、ください」
 と、入れ物ごと差し出される。中で何かが動いているような気がするんだけど。
 「主人(マスター)からのプレゼントよ。中身だけ受け取ってちょうだい」
 そう話した元敵は、女の子が持つポシェットのふたをあけ、手には緑色の鎖で五重以上に巻かれている何かがいた。どうやら、怨霊のようだけど。
 「あ、あの。楓、さん、力が不安、定みたいだから。その」
 ああ、そういうことね。
 「ありがとう、明日香ちゃん。でももらっていいの? 明日香ちゃんは使わない」
 「だ、大丈夫、です。クゥちゃん、助けてくれたし」
 私の力じゃあないんだけど。おそらく、カーラ君たちが何かを話したのだろう。
 彼女の気持ちも汲みたいので、感謝と共に受け取ることに。
 「それ、主人(マスター)が一人で倒したのよ。すごいでしょっ」
 「ウソッ。強めだよね、コイツ」
 「ホ、ン、ト。加阿羅(カーラ)ちゃんなんて腰抜かしてたもの」
 「抜かしていない。いい加減なことを言わないでくれ」
 驚きはしたが、と本人。この人をからかって遊ぶなんて、プリムはすごい人である。
 「合わせてくれたっていいじゃないの、もう」
 いや~、いじけても、ねえ。
 そんなこんなの状況の中、再び歩き出そうとすると、足元にクナイが飛んでくる。私がよく使うジュツではなく、本物の刃物である。
 「能力者の人たちでしょ。手合わせしてよ~っ」
 と、二人のジャージ姿が瞬間移動で登場する。同じ学校のものだが、会ったことはない。
 「あれ。藜御(あかざみ)さんって誰だろ」
 「見た目的に銀髪の人だろ」
 ポカンとしてる女の子としっかりしていそうな男の子。彼女たちはバスケイベントの服装のまま参戦したらしい。
 「あっ。あの人、春夏冬(あきなし)先輩かも。超ラッキー、うわさどおりの超イケメンッ」
 「出た追っかけ精神」
 「いいじゃん、減るもんじゃないんだし」
 な、何しに来たんですか。あんたらは。
 ちなみにすぐ後ろからは、うっとうしそうなため息が聞こえた。
 「というコトだから、藜御(あかざみ)先輩。一緒に来てもらえませんか」
 「どういう意味なのかわかんないけど。お断り」
 「ええっ、そんなぁ。女同士イケメンの話をしまじょ」
 脳天を直撃された後輩は床に顔面ダイブをする。拳からユゲを出している男子生徒は、コホン、と咳払いをした。
 「このバカは放っておいて。あるお方が君と話したがってるんだ。だから来てほしいんだけど」
 「そっちからくるように言ってもらえますか」
 「それが立場上できないんだよね。俺も一方的だとは思うんだけど、さ」
 このままだとラチがあかないわね。どうするか。おそらく、相手も頭をかいている辺り、同じように考えているのかもしれない。
 「じゃあこうしよう。二対二で対決して勝ったほうの言うことを聞くってのは」
 「中々いいアイデアだ」
 そう言いながら前に出たカーラ君。私に視線を配ると、すぐに前に戻した。
 「男女のペアでいいだろう」
 「もち。むしろ助かるよ。ほら、いつまで寝てるんだって」
 「うう、あんたがやったんじゃん」
 患部をさすりながら立ち上がる女子生徒。手が動いており、既に戦闘が始まっていることを示した。
 「んじゃ、遠慮しないよおっ」
 レイリョクを解放したと同時に現れた銃。既に構えられており、こんな至近距離でぶっ放し始めたではないか。
 じょじょじょ、冗談じゃないわよっ。
 思わず頭を抱えてうずくまる私。しかし、銃撃音が鳴り響いただけで、こちらには何の被害もない。
 いや、正確に言えば、カーラ君がいつの間にか緑色の壁を出しており、こちらへの被弾を防いでいたのだ。
 「わぁお。不意をついたのに」
 「霊力を弾に換えて、か。面白い発想だ」
 壁のところどころが、ぶるっと動く。
 「どのぐらいの威力なのか、確かめてみよう」
 この言葉が合図だったのか、先ほど身震いしたモノは、相手に向かって飛んでいく。おそらく、撃たれた弾なのだろう。
 「うげっ、そんなのアリッ」
 「まあ、何でもアリな世界だからなあ」
 そう話した男子生徒は、負けじと前に出て両手を上下に構える。すると大きな盾のようなものが現れ、弾をはじいた。
 彼の口元は、ニヤリ、と歪ませる。
 「初めて見たよ。こいつの攻撃防いだ奴」
 「まさかこれで終わりじゃないだろう。あまりにも単純すぎる」
 「ちゃんと正攻法もあるって。でもなあ、あんた相手じゃ面倒そうだし」
 「藜御(あかざみ)先輩、いいなあ~。イケメンに守ってもらえて」
 「俺じゃ不服だってのか」
 「あ、ゴメンゴメン。そういう意味じゃないんだ」
 失言失言、と女子生徒。どうやら軽口のようである。
 一方彼らの会話に、カーラ君は首をひねる。
 「場所が悪いなら変えようか。別に構わないが」
 「いや、今回は引くよ。ちゃんと準備してくるからそんときにお願い」
 何よそれ。ちゃんと準備してからうろつきなさいって。
 「それならそれで構わない。そのときは返り討ちになるだけだよ」
 「うっわー、言ってくれるじゃん。絶対に負けないんだからっ」
 ビシィッ、と人差し指で指される私たち。その後姿を消した二人は、微妙な空気を残していった。

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