東京異界録 第2章 第24録

 力を出したカヌス君は、もう一度左手にレイリョクを集めながらジジイに向かっていく。今度は壁をすり抜け、相手にストレートをお見舞いした。
 顔面に入ったパンチはジジイを壁に激突させる。
 「ば、馬鹿な。何故結界が利かん」
 「人間如きの術でこのオレ様を抑えられると思ったのか」
 なめんじゃねえよ、と次男坊。うわあ、かなり怒り心頭のようである。
 もちろん、私も人のこと言えないけど。
 斬り結びながら、私は少しずつ彼らと距離をあけていく。ジジイに声を聞かれないようにするためだ。
 そして、背中にもうふたりほど同じ体形の人がいたらぶつかるだろう場所まで来ると、女の子の右手首をつかむ。
 「大人しくしてて。今、助けてあげるから」
 「そんなウソにだまされないわ。大人なんて、みんなウソツキだもん」
 女の子の左足から繰り出されたひざげりは、私の右腕をしばらく使い物にならなくさせる。しびれた手をかばいながら、お互いの間を縮まらないようにしていく。
 まいったわね。威嚇でジュツを使おうにも時間をくれないし、かといって攻撃するわけにもいかない。一撃でも返してしまったら、言葉が届かなくなってしまうだろう。
 うう、さっき部屋に誰もいなければ作戦会議できたんだけど。って、ないものねだりをしてもしょうがないわね。
 ちなみに今やっているのは体力減らし。私と彼女のだとさすがに私のほうが上だから、動けなくなるまで動き回っているのよ。
 女の子を動けなくさせれば、あとはジジイと戦うだけになる。向こうさんにも都合があるみたいだし、その辺りは戦いながら探っていくしかないだろう。
 昨日の今日で知らされていないのか、はたまた別の意味か。そうだったらちょっぴり寂しいんだけどね。仕方がない。
 「おのれ、小娘共が。調子に乗るでないわっ」
 「そっくりお返しするぜジジイ。とっとと返れ」
 何かのジュツを発動させようとするカヌス君。女の子は危険を察知したのか、ジジイの元へ行こうとする。
 当然私は彼らの間に入って阻止すると、彼女を押し戻し、壁際に追いつめる。気の毒だが、ジュツで少し体をしびれさせよう。
 しかし、時間は手を差し伸べてくれなかった。クサナギが女の子の隣に現れたのである。
 急いでいたのか、かなり息が切れており、服も乱れていた。
 だが、彼の素早い斬撃は、私を女の子から引き離すことに成功する。
 「無事ですか、主人(マスター)」
 「クゥちゃん、どこ行ってたのっ」
 「申し訳ありません。彼らに少し手間取りまして」
 か、彼ら? どういうことなの。クサナギは私のところに乗り込んできたはず。
 いや、今はそんなことを考えている場合ではない。クサナギが加わってしまったら、私では足止めできなくなってしまう。
 『さすがはクサナギ、と言ったところか』
 聞き覚えのある声とほぼ同時に、主が和服で姿を見せる。本人だけでなく、ユキと如月君も一緒だった。
 「おれの包囲網を抜けるとはね」
 「だ、誰、あの緑の人」
 「創造主の兄君ですよ。厄介です」
 クサナギの服を握りながら聞く女の子。どうも怯えているようだけど。
 もしかしたら、以前の如月君のように、カーラ君の実力を見抜いたのかもしれない。
 クサナギは女の子を抱きしめながら、長男をにらむ。が、その視線をさえぎるように、同級生は前に出た。
 「くっ」
 「形勢逆転だな。大人しくしていたらどうだ」
 「その子を守りながらじゃあ、ブが悪いっしょ」
 人間組が釘を刺し、彼らの封じ込めにかかる。確かに、どんな相手でも容赦しないのがふたりもいては、クサナギも動けないだろう。
 「ここはおれたちが抑えるから、楓ちゃんはあの老人を」
 「わかった、ありがとう」
 「え、ちょ、ねーちゃんっ」
 お礼を言ってジュツを練りながら走り出すと、ユキが何か言っているような気がした。
 カヌス君と合流すると、まだ決着がついていない様子だった。だが、ジジイは既に、人間の姿をしていない。
 いや、正確には、ジジイが闇の触手の中心にいる、という感じ。どこかで見たことのあるウネウネに、守られているようだ。
 カヌス君が敵から離れたところを見計らって、感情に任せた電撃を食らわせる。
 「あのガキはどうした」
 「ユキたちが抑えてくれてる」
 「そうか。んじゃ、こっちもそろそろ」
 戻るとするか、と彼。ちょっと、どこに行く気なのよっ。
 「後ろに飛んでっ」
 あれ、次男の口調が変わってるけど。あれ。
 条件反射のごとく言われたとおりに動くと、彼の体は真っ赤の炎に包まれていた。そして、着地と同時に、ありえない見た目に変わる。
 「ようやく動きやすくなったわ」
 と、薙刀を構えるカシスちゃん。そう、妹が出てきたのである。
 「な、一体どうなっておる」
 「あんたに関係ないでしょ」
 説明する必要ないわよ、と彼女。顔が相当怖くなっております、はい。
 「行くわよ楓。アレの中心は女性しか攻撃できないようになってるから」
 「わ、わかった」
 なんつうヘンチクリンな敵なんだ。ただのスケベなんじゃ。
 聞きたいことは色々あるが、今は目の前にいる奴をどうにかしないと落ち着くことができない。
 私はカシスちゃんとともに、再びジジイと対峙することになった。

 

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