東京異界録 第2章 第19録

 家に帰った私は、鳴(なる)兄に事情を話してしかめっ面にさせてしまった後、何とかわかってもらいベッドにもぐる。
 翌朝、通常の朝がやってくると、普通に学校へと登校。最近、毎日が長く感じる気もしつつ、忘れかけてたバスケのことや学校の拠点問題にもとりかからないといけない。
 ふう、問題ばっかりね、っとに。
 シキの扱いにも慣れてきて、結構な時間を調べてもらっているのだけど、これといった手がかりはつかめないまま。一週間以上たっているのに、何も進展がないのよ。
 「まあよ。今までで一番強く感じたのはあの日だけだしな。以降はオレもつかんでねえし」
 「他の能力者が倒しちゃってるってことなのかしら」
 「も考えられんな。だとしたらぶつかんねえように気をつけろよ」
 能力者は、倒した物の怪の力を自分のそれに変えることができる。力の種類はいろいろあるけれど。
 カヌス君の言うぶつからないように、というのは、おそらく彼らと争いにならないようにっていうことだろう。
 「ユキはどう」
 「早朝に起きて、ご飯ねだってきたよ~」
 あんの馬鹿は。ホント恥ずかしい奴ね、ったく。
 まあ、元気になったならよいか。帰ってきたら一発殴っておこう。
 「そういえば、バスケっていつだっけ~」
 「来週の水曜日よ。はあ、やることいっぱいあるのに」
 「そんなに根詰めるこたあねえだろ。徐々にやってけって」
 「人のこと、いえるのかな~。この口は~」
 と、つきたてのお餅を引っ張るように弟のほおをつね上げる。けっこう痛そうである。
 「いってーなっ。自慢の顔に傷がついたらどうしてくれんだ」
 「ん~、自分で治せば~」
 ニコニコ顔で食べ、口の中がなくなってから出た言葉。う~ん、毎度のことだけど、弟をからかって遊ぶのが好きなのね、翔(しょう)君は。
 ちなみに、今はお昼時間。もうひとつついでに言っておくと、私たちの周りにはなぜかいつも人がいない。遠巻きに見られているような感じはするけど、彼らといるとそれもどうでもよくなってしまうの。
 だから異界関係のことも話しちゃうのよね。忍者がいるわけじゃないから。近い人はいるけど。
 「どうにしても、今できることをやるのは間違いないね~。何が一番必要なのか、考えるんだよ~」
 優先順位っていうんだけどね~、と、翔(しょう)君。彼いわく、自分が達成させたい事項の道筋を見つけて、実行する順番を決めるってことらしい。
 「君の場合は力を上げることだから、それに関してどうすれば効率的かを考えればいいよ~」
 涼太君もそうしてるだろうし~、と長兄。やっぱり何も考えないでやると、どこか違うところにいっちゃうのかしら。
 「人によるんじゃねえの。時と場合にもよるしな」
 「まあね~。一番いいのは、自分の性格に合ってることだからね~」
 うう、ムズかしいんですけど。頭痛いわ。
 って、もうお昼終わるじゃない。マズい、確か次は教室移動だったわね。
 片づけて立ち上がると、兄弟たちに伝える。しかし、彼らは目を合わせるだけだった。
 「早く行かない遅刻しちゃうわよ」
 「いや、今日って授業変わったんじゃなかったっけか」
 「そうそう。先生が休みだからって教室で自習だったような~」
 そ、そーでしたっけ。
 「いわんこっちゃねえ。ちったあ周りも見ろって」
 「だから、お前が言うなって」
 「お前だって見えてねえときあんだろうが」
 「お前程じゃないけどね~」
 うーん、目の前でネコ同士のケンカが始まったよーな。
 おっかないオーラを感じたので、早々に教室に行くことにした。
 クラスに戻ると、瞬君が言ったように内容が変わっていた。黒板に思いっきり自習の文字が躍っており、部屋の中はガヤガヤと騒がしい。
 それにしても何しようかな。今日は珍しく宿題も出てないし。
 やることを探していると、スマホがぶるった。見てみると如月君からで、画面には気をつけろ。強い力を、という文章が。
 メッセージを開き続きを読んでみると、強い力を持つ何かが、こちらに向かっているようだ。
 しかも、彼のところにも来るっぽい。大変だわ、早くふたりにも伝えなきゃ。
 そして、チャイムがなると同時におかしなことが起こる。先程までザワついていた室内が、異様に静かになっていたのだ。
 そして、周囲には、人の姿はおろか、気配もない。
 まずい、ハメられた。
 こう思った瞬間、私は教室から出ようとする。だが、いつの間にか鍵が閉められており、びくともしない。
 「独りになったのが命取りでしたね」
 聞き覚えのある声に、私は背中を隠すように動く。目の前には、クサナギが立っていた。
 こ、こいつ、いつの間に学校にいたのよ。
 「私がここにいるのが不思議ですか」
 「そうね。こんなに早く来るなんて思わなかったわよ」
 「素直で結構、そのまま大人しく付いて来ていただけると助かるのですが」
 「冗談じゃないわよ。お、こ、と、わ、り」
 「やはり力づくでなくては駄目ですかね」
 仕方がありません、と口にしつつ、クサナギは剣を生成。右腕を振り払うと、得物の姿がくっきりと見える。
 対して私は、カヌス君からもらった道具で手甲を呼び出す。
 戦闘体制が整うと、空気が冬のように張り詰めた。

 

 

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