東京異界録 第2章 第4録

 シキに調査を依頼してから30分ほど。宿題も終わり暇を持て余していたので、カグナさんの店に移動することに。
 ちょうどやりきった後に翔(しょう)君と合流したため、今は3人で移動中だ。
 ご飯も目当てだけどね。カグナさんが作る料理も美味しいのよ。鳴(なる)兄とどっちが腕が上なのかしら。
 「ところで、翔君はどこにいたの」
 「ん~、屋上」
 「何でそんなところに」
 「え~、日向ぼっこ」
 聞いた私が馬鹿だった。そういやあ、そうやってのんびり過ごすのが好きなんだっけ。本当に戦いのときとギャップが激しい人だわ。
 「そんなことより、式はどう~」
 「まだ帰って来てないの。調べてると思うけど」
 「初めて使ったんだし、1日ぐらい様子見とけ」
 「うん。あ、着いた着いた」
 店内に入ると、まだディナータイムが始まる前だからお客さんは誰もいない。
 その代わり、カウンターにはウェイター姿の鳴兄がいた。
 「いらっしゃい、ユキヒロは一緒じゃないんだ」
 「学校からそのまま来たのよ」
 「そうなのか。あ、何がいい」
 奥のテーブルへと進み、私たちはテーブル席へ。ここでたまに働いている鳴兄は、お水とおしぼりを持って来てくれた。
 彼、日本語で接客できるようになりたいっていって、ウェイターやってるのよ。すごいわよね。
 「どうよ、鳴海(なるみ)。慣れたか」
 「まあ。たまにわからないけど」
 「それだけ出来れば上等だと思うがな」
 「だねえ~。言葉が通じないと大変だからね~」
 「翔君、海外に行ったことあるんだ」
 「あるよ~」
 大変だったんだから~、と、笑顔で返す。大してそう感じていないような気がするのは、私だけかな。
 さらには、オレらはフリーパスだもんな、と彼の隣に座るいたずら坊主。怖いから意味は聞かないことにする。
 「決まったかい」
 「オムライス大盛り~」
 「クリームパスタ」
 「ハヤシライス」
 「またハヤシライスかよ。お前好きだな」
 「いいじゃないっ」
 「えーっと、飲みものやデザートは」
 それぞれ気に入っているメニューを追加し、鳴兄は笑顔で厨房へ。ちなみに、中にはカグナさんがいる。
 調理器具が動きだすと、店の鈴が再度なった。ユキとカシスちゃんだ。
 「あら、早かったのね」
 「お前らが遅えんじゃねえのか」
 「うんにゃ、オレたちはいつもどおりだよ」
 肉親同士が同列に座り、鳴兄が先ほどと同じ対応をする。皆で食事するのも、もう7年目だ。
 私は小声で、
 「そういえば、カシスちゃん。あの後どうなったの」
 「あの2人は救急車で運ばれたわよ。その間に記憶を操作しておいたわ」
 「じゃあ、普通の喧嘩ってことなんだね。よかった」
 「何がよかったんだか。また来たらどうすんの」
 と、ユキ。私は、まあね、とため息で返事をした。本当は喧嘩なんてしたくないんだけど。
 こうなってしまったのは数年前。私が竜間にかつあげされそうになってはっ倒したところから始まるのよね。
 しかも不幸なことに、それを赤土に見られちゃったのよ。それが原因で今まで喧嘩を売られているのだけど。
 「気に入られてるんじゃないの~」
 「さあ。強い奴と戦うのが楽しいとか言ってるけど」
 「んま、お前は常人よりは強えよな」
 まったく嬉しくないほめ言葉で。
 「それはともかく。燈(あかり)、報告して~」
 そうね、と、燈と呼ばれたカシスちゃん。彼女が人間の姿をしているときの名前で、苗字は兄たちと同じ春夏冬を名乗っている。
 ただ単に話すときもあるが、こういう風にわかったことを教えてくれる報告会のときもあるのだ。
 「まずは周りの動きからね。十二月(じゅうにげつ)のうち、3人が活動中」
 十二月とは、旧暦に使われていた月の名前を使って表される能力者のことだという。詳しくは聞かされていないが、普通の彼らよりもレイリョクが高く、こちら側の世界、つまり、異界のことを知っている人物のことだ。
 昔は天皇を守っていた守護者だったらしいけど。
 「神無月がいる可能性もあるけど、現在調査中ってところね」
 「ってコトは、4人の関係者がいるってことなんだね」
 と、彼女と同じ中学に通う弟。そういうことね、と燈ちゃんが返事をすると、先に頼んだメニューが届き、食事も開始することに。
 「そして、怨鬼の動きが活発になってるわ」
 「お前たちには関係ないと思うがよ、異界に人間がうろついてるんだ。連中の動きはそれが関わってるかもな」
 「え、でもそっちにはカヌス君たちの家があるだけで他は何もないって」
 「そうなんだけどよ。何年たってもオレらに害がないから放っておいてる」
 た、助けようとも思わないんだね。無事ならいいんだけど、その人。
 「あたしたちからはこれだけだけど、2人からは何かあるかしら」
 顔を合わせる私たち。
 「特には。レオンも相変わらず部屋にいるし」
 「オレもないなあ。あ、きたっ」
 手を拭き、満面な笑みでメンチカツカレー超大盛りを食べ始めるユキ。さすがは育ち盛りである。それにしてもカグナさん、太っ腹だわ。
 「体調の変化とかもないかしら」
 「うん。全然いつも通りだよ」
 「ならいいけど。もし変調したらすぐにいってね。女の子は特に大変だから」
 「ありがとう。行事もあるし、気をつけるね」
 これからバスケ大会もあるし、いつも通り力をつけるために怨鬼を倒したりシキにしなきゃいけない。
 これからまた忙しくなるわね。ちょうど1ヶ月後にはテストもあるから。
 おいしい食事を堪能した後、私とユキは自宅へと戻ったのだった。

 

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