東京異界録 第2章 第1録

 家に帰って翌日の準備をして就寝した私たちは、日が昇ると普通の学生に戻るようになっている。
 朝のドタバタを過ごしたあと学校に着くと、三時間目までは普通の授業を受け、それからHRに。
 本来なら次は国語なのだが、学校行事の関係上、急遽あてたってわけ。若干開始が遅れたが、前の時間が体育だったから仕方がない。
 で、ここからが問題なのよね。
 「というわけで、バスケチームを決めたいと思います。優勝チームには景品が出ますので、はりきっていきましょう」
 何故かわからないけど、あそこの人外兄弟が笑いをこらえている。まあ無視。
 ちなみに、この行事は、クラスの親睦を深めるのが目的。主に一年生のためだけど、どうせなら上も下も仲良くしましょうってことで始まったらしい。
 「じゃあ、今出てる案はくじ引きとバスケ部の人が中心となって話し合うってものですが」
 そこに、ハイハイ、と勢いよく手を上げる春夏冬弟が。意見を聞くと、
 「かったるいんでオレ、フケまーすっ」
 「あ~、おれもおれも」
 いい度胸してんじゃないの、この馬鹿共がっ。
 「じゃあ春夏冬兄弟は一ヶ月間トイレ掃除ってことで」
 「何でだよ、横暴じゃねえか」
 「とっちがよ。掃除か参加するかどっちかにして」
 「え~、どっちもきょひ~」
 やかましい。笑顔でかわいらしく言っても無駄ですよ、そこ。
 「そんなこと言わないで出てくれよ。お前らすげえ運動神経いいんだし」
 「そうそう、大賞の大盛りカツカレー一ヶ月間半額はでかいだろ。なっ」
 食べ盛りの男子たちは、こぞって参加を促していく。食欲を刺激されているせいか、かなり必死だ。おそらく、前の体育で体力測定したから、それでわかったのだろう。
 「オレ、カツカレーなんて食わねえし」
 「副賞のそばコロバパンが一ヶ月無料だぞっ」
 「つうか、何で食いもんばっかなんだよ」
 賞品化しやすいためです。ちなみにコロバパンとは、コロッケと焼きそばが挟まったパンのこと。学校内のパン派に一番人気があり、私も大好きなメニューだ。
 表情はにこやかだが、あからさまに興味がないだろう翔君は、HRが始まってから配られたプリントに目を通している。
 「じゃ、じゃあさ、参加してくれたら藜御がデートしてくれるってさ」
 「馬鹿いってんじゃないっ」
 「いいじゃないかよ。減るもんじゃないし、参加してもらったほうが助かるだろ」
 「それとこれとは話が別よっ」
 男子に反論していると、翔君が顔を上げる。
 「瞬」
 「何だよ」
 「優勝しなかったら殺すからね~」
 と、黒い笑顔でいう兄。気のせいか、弟君の背後に、ヒイッ、という文字が見えた気がした。
 「おっしゃ、翔がやる気出してくれたぞっ」
 「やっぱカツカレーはでかいよな、偉大だよな、うん」
 「え、委員長とデートしたいからじゃなくって」
 「お前、マジでか」
 「さあね~」
 「あんたら、いい加減にしなさいよ」
 一部よくわからない理由を並べながら喜ぶ男子たち。私は戯言を炎で静めると、バスケ部の小杉君と相田さんにバトンタッチをすることにした。私ではこれ以上進められないからだ。
 私は席に戻り、
 「ありがとね、ちゃんと参加してくれて」
 「別に試合に出るなんて言ってないけどね~」
 何よそれっ。
 「何でオレがバスケなんかしなきゃならねえんだよ」
 「行事なんだから仕方がないじゃないの」
 「かったりい。おい翔、どういうつもりだ」
 「このイベント、全校生徒が参加するんだってね」
 そう話しながら、彼は瞬君にプリントを見せる。それがどうしたんだ、と返されると、あぶりだすのにちょうどいいと思わない、と口にした。
 「どういうことなの」
 「後で話すよ~、それより」
 黒板を指差す長男。どういうチームをするか参考にするために、一度テストすることになったようだ。
 んー、確か去年もそんなことをしたような気がする。
 担任のちーちゃん先生に体育館か校庭を使ってよいかの許可を得ようとすると、前者なら空いているという回答が。全員で移動し、シュートやドリブルをやってみることになった。
 まあ、去年とほとんどメンツが変わらないから、すぐに終わるだろう。
 「翔、お前ダンクできないのか」
 「ん~、やったことないけど~」
 「お前デカいからさ、できんじゃね」
 テストが終わって暇だったのか、ある男子が彼にボールをパスする。選手ほど大きくないと思うけどね~、といいながら、コートの真ん中辺りに歩いていく。
 そして、ドリブルを数回するとゴールに向かって走りだし、ボールを持って勢いよくジャンプ。
 高さは十分だったようで、初めてとは思えないほど、ボールがゴールへ見事にはまる。まあ、素人目だから、華麗かどうかはわからないけどね。
 しっかし、本当に運動神経いいわね。さすがだわ。
 ダンクの音はみんなの視線を集めるのに余裕だったらしく、女子からは黄色い声が。
 ボールを拾い、集団の中にいる瞬君にパスすると、お前もできるんじゃないの、といった。
 はあ、とため息をつきながら、試してみるらしい彼。無理にさせられている感満載だけど。
 そして、兄の言うとおり、身長の差分を跳躍力でカバーした弟君のダンクも決まる。
 優勝間違いなしじゃね、とクラスは歓喜に沸いた。
 でも私は、どうも気になることがあるせいで、素直に喜びの輪に入ることができずにいた。

 

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