不思議な夢の物語 秘法の正体

 クガクは地下、フィリスは一階、リュイは三階から攻略し、無事に二階で合流した三人。
 それぞれの事情を把握するため、一度クガクとフィリスが休憩していた一階の部屋へとやってきた。
 「リュイ、コイツひどいんだよ。俺がお茶飲んでたらいきなり殴り倒してさ」
 「当たり前でしょっ、こっちは戦ってたってのに、のんきにお茶なんか飲んで」
 「そりゃオレも殴るぜ」
 「あんまりだ、俺だって戦ってたのに」
 「その割には疲れてねぇじゃんか」
 どこからだされたのか疑問も持たず、お腹とのどをうるおすリュイ。つられたのか、クガクもクッキーをよく食べている。
 その二人の様子を、ため息をつきながらフィリスは見ている。お茶だけいただいているようだ。
 「石像のガーゴイルだったから、グリシェと一緒に倒したんだよ」
 「へぇ~、さすがグリーソーズマンね。急所もわかったんだ」
 「グリシェが教えてくれるから」
 「使えるもんは使っちまえ主義か」
 「いいんじゃないのかな、別に」
 「あ、あっそう」
 「からかってんじゃないわよ。リュイはどうだったの」
 「オレは変なガキんちょと鬼ごっこしてた」
 「はいっ」
 「変なでかい犬に乗ってさ。追いつかないから障壁で防いで大変だったよ」
 明日筋肉痛だ、とおどけるリュイ。体力なさすぎだろ、というクガクのツッコミは聞き流された。
 「フィリスはどうだったんだよ」
 「若奥様とカッコイイ執事の人がでてきて、敵を倒したらこれが手に入ったわ」
 と、かばんからはみだしていたシャオルの爪を取りだす。布をはずすと彼女の顔が見えるぐらいの緑色の輝きを放っていた。
 クガクとリュイもつられて持っている宝石をだすと、クガクのもつミナレスの涙は青色に、リュイのもつボロレワの角は黄色く光っている。
 「あれ、ミナレスの涙ってそんなに光ってたっけ」
 「俺も思った。何でだろ」
 宝石たちは、自らが輝く理由を、己の光で説明した。各々が光線を放ち、持ち主の視界を奪っていく。
 気がつけばとおってきた二階の大広間の中央に立っていた。
 「なっ、どうなってんのよっ」
 「あーっ、俺のクッキーがなくなってるっ」
 「そうじゃねぇだろーが、ここににいることに驚けボケッ」
 『違う意味でたくましいわね、あんた』
 横であきれ顔のフィリスは、もはやいう言葉すらないらしい。
 後頭部に小さなこぶを作られたクガクは、作成者のリュイをにらむが、グリシェがでてきていることに気がつく。彼の血筋はグリシェと交信できるが彼らから声をかけることはめったにない。
 妖精たちが現れるのは、つまるところ、警戒しているから、なのだ。
 「リュイ、フィリス。戦闘準備しとけ。何かいるみたいだ」
 え、返答する間もなく、周囲に黒い霧が発生する。ほこりではなく、蒸気のようなものが彼らを中心に取り巻いていく。
 「もしかして、コレが若奥様たちの力を封じた何かなの」
 「どういう意味だ、それ」
 フィリスは早口で、シャオルの爪を渡されたときの状況を話す。三人で背中を合わせながら、リュイもそういえば、と切りだす。
 「恰幅のいいじーさんが、後は頼む、っていってたな」
 「じゃあ、ここの秘宝を狙って誰かが家の人をおさえてるっとことか」
 「そういうこったな」
 前には影の魔物とガイコツの斧騎士、ゾンビなどの死霊系だ。フィリスのときと同じで、直接攻撃が効きにくく、魔法に弱い傾向がある。しかし、あくまで傾向、である。
 『七体いるよ』
 「七体だって」
 「ホントなの、クガク」
 「グリシェがいってるから間違いないよ。リュイ、作戦はどんなのだ」
 「ちったぁ自分で考えろっ」
 そうこう話している間にも、敵は獲物を倒そうとやってきている。それぞれの得意分野が違うため、一緒に戦ったほうが効率がよいことぐらい、クガクにもわかっていた。
 「お前トップ、オレサイド、フィリスバック」
 了解、と少年少女の声がはもり、指示通りに動く。彼らだけにしかわからない表現だが、前衛、中衛、後衛の立場で動くのと同じことだ。
 クガクがグリシェの力を借り、ガイコツの斧騎士と切り結ぶ。剣がもたないため、左側にまわりこみ首を切り落とした。そこにリュイのドイが炸裂し、一匹を火のエサにする。
 一方のフィリスは回復魔法が攻撃になるゾンビ系を三体と対峙。一匹に集中してヒリングをかけると通常とは逆の役割をはたし、敵の体をちりにする。死肉でできている肉体が正常な体に戻ってしまうと、機能しなくなるからだ。
 残りの二体は、心臓を貫かれたり全身火だるまになったりして、仲間の後をおう。
 次は三体、影の魔物だ。物理も魔法も効果が薄い相手である。
 「一匹でも面倒くさいのに」
 「念のために持ってきてよかったぜ。コイツで何とかできるかもしれない」
 一冊の本をとりだしたリュイは、フィリスに見せると協力を願いでる。彼女は中身を確認すると、
 「光の魔法じゃないっ、あたしたちじゃまだ」
 「だから二人でやるんだって。グリシェにも手伝ってもらえればできるぜ、きっと」
 「光の魔法って上位魔法だろ。大丈夫なのか」
 「ある部屋に魔法力を上げるアイテムがあったんだ。これを使ってオレたちが基盤を創る、あとはグリシェとお前に任せる」
 「だとグリシェ。できそうか」
 影の魔物が襲ってくる。
 「うわっ、このっ」
 先頭にいたクガクがかろうじて反応し、剣で応戦する。残り二体にも近づきながら、仲間から離そうとした。
 『クガク、大丈夫。簡単なものだったから、基盤ができたら私の力を使って発動できるよ』
 「よっしゃ、こっちのフォローも頼む」
 『あいあいっ』
 クガクは幼なじみにむかって笑う。表情の意味を理解した二人は、さっそく作業に入った。
 事態を察した魔物の一体が、リュイたちに攻撃を加えようとする。だが、前に風の刃とよばれる風で創られたブーメランを受け行く手をさえぎられた。
 動きが止まった魔物の前に、クガクが立ちはだかる。風を剣にまといながら動かないでいた。
 今度は三体いっせいに目の前の邪魔者を排除しようと攻撃してくる。
 だが、暗闇に慣れた動体視力は一匹を打ち払い、またはかわすが一撃をはずす。
 反撃を利き手に受けたクガクは、声はださず傷口をおさえる。適当に引っ張りだした布で止血しながら、二人と距離をあけるよう右側に爪をよけていき、巻き終わると回しげりをはなった。
 ほとんど効果はないが、気を引くには十分な時間だった。再び放った風の刃がようやく影の形をなくしていく。
 しかし、後の二体はほぼ無傷。魔法が完成しないことには勝ち目がない。
 だんだん、クガクの目が泳いでいく。
 彼の様子に気がついたのか、また複数体制でやってくる影の魔物。クガクの剣の構えと呼吸が荒くなっていった。
 『クガク落ち着いて、もうちょっとだよ』
 「どんぐらいだ」
 『あと数分ぐらい。ほら頑張って』
 グリシェがすばやさを上げる補助効果をつけてくれる。先が見えたことで心身ともに軽くなったクガクは、敵の攻撃を受け流すことに専念することにした。
 顔や腕ににかすり傷を負いながらも仲間との距離を保っていると、敵の姿が突然小さく見えた。背中のほうから光の帯が天井にむかって立ちのぼり、生きている者たちの影のほうが長く伸びたのだ。
 「待たせたなクガクッ」
 「早くこっちへっ」
 相手が動けないことを確認すると、自慢の足で前線を駆けぬける。二人がかりでもっていた手のひらほどのアイテムの上にクガクの手が重なる。
 「グリシェッ」
 友人の声に応えた風の妖精は、彼を媒体とし部屋いっぱいの竜巻を起こした。
 光は風に乗って渦をつくり実体がある者以外を吹き飛ばしていく。
 光の台風が収まった洋館は、夜明けの清々しさをとり戻していた。

 

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