不思議な夢の物語 ボロレワの角

 あのさあ、もう少しマシな歓迎しろよな。なぁ~んで丈夫な枝がいきなり折れたあげくに、へんちくりんな部屋に飛ばされるんだか。せめて落下中にテレポートしてくれよ、ったく。
 で、何だここは。おもちゃばっかで子供部屋みたいだが。
 『ようこそ我が輩の部屋へ』
 「うわっ。だだだ、誰だっ」
 誰もいねぇし。どっから声がしたんだ。
 『どこを見ているんだ。下だ、下』
 ん、下か。
 体が透きとおっている子供が一人。それ以外、人型をしているモノはいなかった。
 「えーっと。ボクは何してるのかな」
 『失礼なやつだな、せっかく我が輩がやしきに入れてやったっていうのに』
 「っつーことはお前が館の主かよっ」
 『お前と呼ぶなブレイモノッ。ここは父上のおやしきだ』
 お前のじゃねーのか。つうかいくつだこのガキんちょは。見た目は十歳前後で昔の坊ちゃまのような服を着ている。自分のことを我が輩とかいっちゃってるあたり、かなり生意気な性格だ。
 ん、待てよ。コイツたしか我が輩の部屋っていってたな。
 『お前もヒホウをねらってきたんだろ』
 「ご名答。で、どこにあるんだ」
 『ショージキモノだな、気に入ったぞ』
 言葉の意味がわかっているのか疑問だが、笑っている限り理解しているんだろう。子供は、そうだな、と考えこみ、
 『我が輩と鬼ごっこをしてつかまえられたら教えてやる』
 そういって部屋からでていった。
 鬼ごっこ、だと。ふざけやがって、シメてやる。
 オレは乱暴に扉を開けると目の前に閃光が走る。きちんと表現すると、大きすぎる犬の爪の軌跡だった。間一髪でかわすことができたが。
 『よくかわしたな。これからが本番だぞ』
 笑いながら犬にまたがり、左側の通路へ消えていった。
 あんのガキ、とっ捕まえて泣かしてやるっ。
 通路の幅はオレとクガクが腕をのばして並んだら少し窮屈なほどの広さだ。物語にでてきそうなライオンほどの体の犬でも走り回れるだろう。
 で、相手は獣に乗って移動しているから、足ではかなわない。
 さて、どうするかね。
 一番よいのは建物の構造を知ること。範囲を指定してなかったからそこも調べとかないとな。
 ということで同じ方向に足を動かしながら、ロッドをだし、道具の選別をしていく。
 追っては逃げ追っては逃げを繰り返しながら、オレは今の場所の把握をしていった。シャクだがあのガキに聞きながらだったけどな。
 状況をまとめるとこうなる。
 ここは三階建ての屋敷で、立っている場所は三階。つまりオレは最上階にいるわけだ。そして、走った感覚だと、ここは住んでいた人たちのプライベートルームだと思われる。
 ちなみに一階にはお客をもてなすための応接室などがあり、二階は舞踏会などに使う大広間があるらしい。
 クガクとフィリスもどこかしらにいるだろう。
 ってことで疲れたから休憩。適当な部屋に入って見てまわる。ついでに宝石があったらうれしいんだけど。
 もちろん、んな簡単に見つかるわけがない。だが、よいものを発見した。ありがたいことに、ここには魔道書がいっぱいあるのだ。
 ムッフッフッフッ。さて、お仕置きタイムといきましょーかね。
 オレは洋館にピッタリな雰囲気の笑みを浮かべた。
 『こらシンニューシャ、どこにいったんだっ。早く我が輩をつかまえにこないかっ』
 寂しがり屋か、アイツは。
 まあ小さいから仕方ないだろう。とりあえず外にでて、
 「ちょっと休んでただけだって。早ぇえんだよお前」
 子供は満足げな表情をし、
 『ふふん、とうぜんだろ。ギブアップか』
 「んなワケあるか。もう一度だ」
 むかむかを抑えながらガキに合わせる。いやぁ、オレって偉大だな。
 子供は犬にまたがったまま、ここまできてみろ、と叫びながら闇の通路へ消えていった。
 さあて、作戦開始。
 オレは子供と反対側に歩いていき、ひとつの扉の前にある台に、ちょっとしたモノを置いた。何かは秘密。
 次に、さっきでてきた部屋のほうヘいき、ドアノブに糸をひっかけて、ある文字を書く。プラス、部屋で見つけたモノをセット。これもお楽しみだ。
 そして最後の仕掛けをしたかったんだが、残念ながらドアノブがなかったためちょっと変更する。
 同じように糸をくくりつけ文字を書くだけだったので、壁についている対のランプ同士を結びつけることにした。
 これで完了だ。うまくいくかはオレ次第。
 発動しないように気をつけながら、子供が走っていった方向へと急ぐ。
 下の階へとつながる踊り場には、待ちくたびれた様子の子供が。
 『おそい、おそすぎるぞ。何をしていた』
 「悪ぃ悪ぃ。はじめましょうかね」
 と、今までと同様に真正面から突っこんでいく。当然、横にとび、そのままオレが来た側に逃げていった。
 オレは、口元を歪ませながら、後に続いていく。
 そして、走りながら魔法をとうなえ、奴らがワナの前にとおりかかる直前、グリーを発動。
 小さな風の矢を受けた犬の足がとまり、ちょうどワナをとおった先でとまる。すかさず距離を縮めてヒモをナイフでちょん切り、光り輝く模様をした壁を出現させた。
 『なっ、これは』
 小僧を無視して逆方向へ走る。ちょっと計算違いが起きたがまあいい、ドイをとなえ前にあるたいまつをともした。普通のたいまつでは考えられない光量をだし、連中を目くらましにする。
 さっき台の上に仕掛けたのはこれだったわけ。
 で、最後にランプ同士をつなげた紐をきり、同じ光の壁を出現させる。ちなみにこの壁、オレが合図をださないと解けない仕組みだ。
 子供に近づき、
 「オレの勝ちだ。さあ、宝石と秘法の場所を教えてもらうぜ」
 『ヒ、ヒキョウモノッ。魔法を使うなんて』
 「何いってやがる、だったらその犬は反則じゃねぇってのか」
 『お、お前のほうがからだが大きいだろうっ、もういちどやり』
 『これ、いい加減にせんか』
 渋いじーさんの声。おそらく実体があったらかなり痛そうなゲンコツだろう。んま、クガクのおばちゃんほどじゃないだろーけど。
 ともかく、腹のでた裕福なじーさんっぽい人は、孫らしき小僧の頭を一緒に下げさせ、
 『申し訳ないの。甘やかし過ぎたようで』
 「そおっすか。ところで宝石と秘法はどこに」
 『ほれ、場所をお伝えしなさい』
 『だっておじい様』
 『だってもへったくれもないわい。早く言わんか』
 口をとがらせ、めちゃくちゃ不服そうな坊主。生きていたら服を燃やしているところだ。
 奴は後ろの通路を人差し指で示し、
 『我が輩の部屋にある、大きなはこの中だ』
 『まったく。我が輩の口調を真似しても大きくなれんぞい』
 あ、そういう意味だったのね。
 「んじゃ、勝ったからもらってくぞ」
 『構わぬよ。少年たちよ、後を頼むぞい』
 おい、今なんていった、と聞こうとしたところ、すでに姿はなかった。たしかに複数形だったよな。
 うーん、あいつらなら大丈夫そうだが。とりあえず、獲物をとって合流しよう。
 指定された部屋へを足を進める。初めにきた場所に戻ると、あまりにものが多いので箱がどれだかわからない。
 たいまつに火をつけ見たところ、人形たちが座っている箱が一番大きいようだ。
 オレはその辺にたいまつをはさみ、人形をどかす。現れた箱をあけ、黄色い角らしきアイテムを発見した。
 形が角っぽいから、ボロレワの角だろう。
 大きなナイフ並みの大きさだったので、壊れないように道具袋にしまいこむ。ほこり以外はキレイな人形をちゃんと箱の上に座らせ、部屋を後にした。
 さて、これからどうしようか。あいつらどこにいんだか。
 とりあえず、何周しても下り階段しかなかったから、そっちに行ってみるか。
 後を頼む、という言葉は、何を指すのか。
 考えながら、階段へと急いだ。

 

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