ドラゴンクエスト8 竜の軌跡 第11話

 聖堂騎士団員のひとり、ククールの頼みを聞き届け、オディロ院長の部屋へと急行したエイトたちだが、聖堂騎士団団長、マルチェロに院長殺害の嫌疑をかけられてしまう。そこに腹違いの兄の彼が呼んだらしい依頼人が登場。
 しかし、一行が持っていた騎士団員のみがもつ指輪を、2階からイヤミ、ならず、マルチェロは持っているなら見せろ、と、彼にいいだした。厳重な警備を抜けるには、内部からの手引きが必要、という理由からだ。
 つまり、彼は半分とはいえ血のつながった弟を疑っているのである。
 「どうした。まさか、指輪をなくしたなどと言うはずはあるまい」
 美しい銀の髪は、ククールの顔を上半分隠す。そして、クックック、と笑いだすと、指輪を奪いとった。
 「よかった、団長殿の手に戻っていたとは」
 「何だと」
 あらぬ展開に、顔をいぶかしむ団長。当の本人は、手袋をはずしながら、指輪をはめる。
 「酒場でスリに盗まれて困っていたんですよ。よかった、見つかって」
 その顔は、まるでいたずら坊主のような表情だった。
 「スリだとぅっ。おい、兄ちゃん、そいつぁ話がちが」
 急にヤンガスが黙ってしまう。足元で、痛い想いをしたからだ。
 「そんな指輪どうだっていいわ。あいつは最初っからそういう魂胆だったのよっ」
 大体、あんなケーハク男のいうことを素直に聞いたのが、そもそも間違いだったのよ、とまくしたてるゼシカ。腕を組みながら目を閉じているあたり、それでも怒りを抑えきれていなさそうだ。
 対して、赤い服を着た聖堂騎士団は、
 「そういう訳です。では、オレは部屋に戻ります」
 と、一礼すると、足をけったゼシカに対し、文句をいいたそうにしているヤンガスの隣をすり抜け即座に部屋を退出。マルチェロの静止も意味がなかった。
 いらだった顔をしながら座り、扉をにらみつけるマルチェロ。奴の処分はいつでもできるとし、話を元に戻した。
 「待たせたな。では、君たちに話を聞こうか」
 彼は、部屋にいた理由とその目的を白状するように要求。話が元に戻ったところで、状況が変わるわけでもなかった。
 「だから、アッシたちは何もやってねえって言ってんだろっ」
 全身を使って異議をとなえるも、もはや、カーテンで腕をとめようとするようなものだった。
 しかも再びノック音の邪魔がはいり、マルチェロは、今度は何だ、と口にする。
 だが、部下の報告は驚くもので、修道院にうろついていた魔物を捕らえたというではないか。
 タイミングがタイミングだからだろうか、すぐに扉が開かれ、その正体をあらわにする。しかし、その姿は。
 蹴り飛ばされたあと持ちあげられた魔物は、聖堂騎士団に対して抗議をする。
 そして、一行の顔を青くさせたのである。
 思わず視線をそらしてしまうヤンガスとゼシカ。ポカンとしてしまったエイトに、机の上にのった主は、手を振りながら、
 「こんなところで何をしておるんじゃ。エイト、答えんかっ」
 とトロデ。彼はあまりにも長い間帰ってこなかったから、寂しくなって探しに来たよう。
 王族の気まぐれはパーティーをより危機に陥れた。
 笑いながら魔物を持ち上げるマルチェロ。バタバタと王は暴れるが、同じ男といえど、若者と初老、しかも体格の差もあり身動きがとれないでいる。
 「旅人殿は、どうやらこの魔物の仲間らしい」
 このような澄んだ目をした方が、と、自分の目に狂いがなかったことを誇らしげに思ったのだろうか。騎士団団長は不敵な笑みを崩さない。
 「何じゃお前は、無礼者め。その手を放さんか。降ろせっ」
 家臣に助けを求めるが、動くに動けないでいるエイト。気がすんだのか、マルチェロはつかんでいる人物を彼に投げつけた。
 「魔物の手下共め。オディロ院長は騙せても、この私はそうはいかんぞ」
 彼は指輪を盗み忍びこませたのはトロデの命令だというと、
 「神をも恐れぬバチ当り共め。院長を殺せば進行の要を失い人々は混乱する、その隙を狙い勢力拡大を図った」
 そんな所か、と話を区切る。筋は通っていなくはないが、お門違いの内容に、一行は反論しようとするが。
 それより早くタカの目をした男の腕が動いた。
 「この魔物たちを牢屋へ。明日の夜明けとともに拷問して、己の罪の重さを思い知らせてやるっ」
 もはや言葉がでないエイトたち。驚嘆とともに口がふさがらなかった。だが、後ろにある拷問室は、男と鉄格子の間から存在感を増していく。
 連行される一行の背から、明日の夜明けを楽しみにしておくんだな、という声がした。
 地下牢へと捕らわれたエイトたち。ヤンガスは鉄格子をつかみながら、
 「くそ、濡れ衣だ。ここから出しやがれいっ」
 と叫んでいる。一方のゼシカは落ち着いており、騒ぐよりも脱出方法を考えよう、という。
 「ねえエイト、何かいい方法を思いつかない」
 「そうだね」
 どうにかしてここからでないと何もできないのは彼も気づいており、どうにかできないかと模索する中、
 「わしは王じゃ、魔物なんかじゃないわい。くっそー、あの無礼者めがっ」
 と、ゼシカの隣で怒り心頭の主。王の知恵を借りれるかと思った元兵士だが、相談どころではなさそうである。
 はあ、とため息をつきながら、エイトは部屋の中を歩く。どこか突破できそうなところがないかを見たり、妙案はないかと頭をまわす。
 だが、頑丈に作られたこの場所を突破できる策はなく、時間だけがすぎていった。
 鉄の悲鳴が響き渡る中、ゼシカが、異なる音を耳にした。
 「待って、誰か来る」
 静かにするようジェスチャーすると、暴れていたヤンガスさえも大人しくなる。
 コツコツ、と音が大きくなるに連れて、歩幅的に男のものか、と思い身構えるエイトの勘はあたる。
 だが、やってきたのは意外な人物。こともあろうに、このような状況に陥れた張本人だったのだ。
 赤い服の聖堂騎士団は、嫌味ったらしい笑みをしながら挨拶をすると、
 「お元気そうで何よりだね」
 「てめえっ」
 牢屋を守る扉さえなければ殴りかかっているだろう勢いで飛びつく元山賊。わざとらしく手をあげるククールは、そう怒るなって、と口にしながら何かを取りだした。
 「さっきは悪かったよ。お詫びに、ほら」
 彼が手にしていたのは、何と鍵束であった。
 しかし、行動が一致しない男に対して、令嬢は眉をつりあげながら、どういうことなのか聞く。
 だが、その質問には答えず、鉄格子を開けると、小声で、
 「ここはじゃあ上の階に声が聞こえちまうかもしれない」
 話は後だ。ついて来な、という銀髪の男。何を考えているのか読めないが、またとないチャンスでもある。
 一行は顔を見合わせると、ククールについていくことにした。
 むかい側の通路にいくと、聖堂騎士団員は、見張りを確認する。
 「ここから先は絶対にしゃべるなよ」
 とクギをさすと、尋問室のほうへと歩いていく。忍びこむかのように、そおっと開けたドアの隙間から、様子をうかがうククール。
 彼の中では大丈夫だったらしく、今度は普通に開けて連れ人たちと一緒に部屋へと入ってく。
 机には、いびきをかきながら気持ちよさそうに眠っている聖堂騎士団の姿があった。
 「夕飯の時、あいつのメシに眠り薬を入れといたのさ」
 なるほど、と納得したエイトたち。よだれまでたらしながら眠っているあたり、相当効いているのだろう。
 さらに奥に進み、一行は拷問室へと足を運ぶ。
 「ここまで来れば安心だ。あんたたちもしゃべっていいぜ」
 真意を聞こうと思ったエイトより先に、
 「おい貴様、一体何のつもりじゃ。わしらをどうする気なんじゃっ」
 「だから、さっきは悪かったよ」
 ククールいわく、指輪の件は、ああでも言わないと彼自身が疑われてしまうらしい。
 「ここを追い出されたら他に行く所がないんだ。けど、ちゃんと助けに来ただろ」
 その言葉に、エイトは何となく、物悲しさを感じる。
 逆にトロデは、頭が沸騰してしまっているのか、そっぽをむいてしまう。
 「そう怒るなって。それよりほら、珍しいものを見せてやるよ」
 またしても持ちあげられてしまった王の前に、顔のついた棺のようなものが。どういう仕掛けなのか突然開いたそれの中には、びっしりとトゲが張り巡らされており、ところどころが不気味に変色してしまっている。
 どうやら、血の染み、のようだが。
 色の正体に気づいたトロデは、歯をガチガチならす。
 「あんたを中に入れてフタを閉めれば、全身をこのトゲが突き刺すのさ」
 オレは手を汚さずにあんたを穴だらけにできるってわけだ、便利だろ、と真っ赤な服をまとうククール。勢いよく右腕をふり放りこむと、同じようにフタを閉めてしまった。
 「陛下っ」
 エイトの声と同時に王の人間とは思えない悲鳴が。他の仲間も顔から血がひいているなか、しでかした本人は笑っている始末。
 だが、その表情は、悪魔が宿った人間ではなかった。誰かが重い鉄を叩く音がすると、
 「おおっ、エイト、聞こえるか。この奥は抜け穴になっておるっ」
 あごの下に右腕を持ってきて笑っていた美男子は、拷問道具の前にいくと、
 「と、まあ、ご覧のとおりだ」
 と、話した。
 目の前の展開についていけず、エイトたちは首から上が別の生き物になったかのような動きをする。再び三人の目が、トロデ王がいるだろう方向へとむく。
 「のんびりしてると、あんたたちを逃がそうとしたのがバレちまう。急いでくれ」
 その言葉で正気に戻った一同は、慌てて鋼鉄の処女(アイアンメイデン)を開ける。中はたいまつがないと歩けないほど暗かった。
 「じゃあ、行くぜ」
 近くにあったのだろう火をともす道具を手にしたククールを先頭に、通路を全員で歩き始める。
 複数の足音が響く中、
 「しかしわからねえ。自分で濡れ衣を着せておいて、なんだって助けに来たんだ」
 「悪く思わないでくれ。生憎、ここの連中にオレは信用がないんでね」
 あの場所でかばったところで助けることはできず、むじろ逆効果になっていた、と続ける。
 「あんたらを尋問してた奴。マルチェロ、あいつはオレを目の敵にしてるからな」
 理由を知っているトロデ以外のパーティーは、目を合わせてしまう。偶然とはいえ、半分は血の繋がった兄弟である、ということを。
 「それで一度、牢屋に入ってもらって、後から助けに来たってわけだ」
 「とは言っても、あんたから見りゃアッシらが素性の知れない人間であることは変わりねえはずだ」
 それを逃しちまってもいいのか、とヤンガス。魔物みてえなおっさんが仲間だってのも本当のことなんだぜ、と、つなげる。
 エイトが後ろからうかがっていると、たいまつを持つ人物の足が止まり、振りかえった。
 「その場にいなかったが、あんたらが院長の命を救ってくれたことぐらい、わかってる」
 ククールはいう。エイトたちが尋問室に連れてこられる少し前に、彼が感じとった禍々しい気が修道院から消えたことを。
 「こう見えて感謝してるんだ。そんなあんたらを見捨てるほど、オレも薄情じゃない」
 真面目な顔から一転、ゼシカを目にいれるやいなや、ニヤッ、とし、
 「それに、そちらのレディをひどい目にあわせられない。奴の拷問は、きついぜ?」
 と、笑う。思わず引いてしまうゼシカだが。
 リーダーは、ククールはいい人だがお調子者なのかも、と思った。
 しばらく歩いていくと、はしごを発見。
 「この上から外に出られる」
 案内人、トロデ、エイトの順にのぼり、ヤンガスとゼシカも続く。わらが引きつめられていたところからでると、どこかの小屋に繋がっているようだった。
 「おお、ミーティア。無事じゃったか」
 父親を目にした白い馬は、優しい瞳をむける。
 「わしがいなくて心細かったじゃろう、もう大丈夫じゃ。さっ、ここから逃げ出すぞ」
 ブルル、と返事をしたミーティア姫は、御者台にのる肉親を感じとると、いつでも歩きだせるように準備をする。エイトが様子を見に近くによると、頭を少し下げ、また鳴いた。
 「わしは姫を連れて先に出ておる。お前たちも早く来るのじゃぞ」
 「はっ」
 まだ姿がない仲間たちを待つことにした家臣は、ククールの、姫、という言葉に反応する。
 「まあいい。オレたちも外に出よう」
 ここまで来りゃよほどのヘマをしない限り逃げられる、と話すと、
 「ま、あれだ。いろいろ悪かったよ」
 「ううん。最後には助けてもらったから」
 笑顔で返すエイトにつられたのか、ククールの口元もゆるむ。
 ようやく上りきったふたりと合流すると、全員の顔を見て、
 「それじゃ、ここでお別れだ。この先のあんたたちの旅に、神の祝福がありますように」
 ひと足早く小屋をでた、赤い聖堂騎士団。彼に続いて旅を再開しようとしたが、誰でもない、ついさっき別れを告げた人物によって防がれる。
 正確には、入り口のところで突っ立っていたククールに、エイトがぶつかってしまったのだ。
 「ご、ごめん。どうし」
 彼の体の先には、炎が広がっていた。

 

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